遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

読書

「あやうく一生懸命生きるところだった」を読んで楽しく生きる!

あやうく一生懸命生きるところだった ハ・ワン (著) 岡崎 暢子 (翻訳) 著者のハ・ワンは、韓国の作家でイラストレーターの40代前半の男性。 表紙のイラストとキャッチーなタイトルにひかれて読んでみた。 表紙のイラストは一見、プールサイドでくつろいでい…

図書館本に感謝の日々

上の書籍の持ち主さんの悲劇的なツイートが下のもの。 ◆むらさき @ukifune0343信じられない話ですが、本棚整理のために出しておいたら、全て処分されました 世の中には、読書あるいは資料として必要だから、本を沢山所蔵している人もいれば、並べるのが好き…

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」はゴールドだった

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー ブレイディ みかこ (著) 新潮社 日本人(イエロー)の母ちゃん=著者ブレイディ みかことアイルランド人(ホワイト)の父ちゃんの間に生まれた息子君が、英国はブライトンの公立中学に進学して少しめげていた(…

小さな暮らしの66歳が「58歳から 日々を大切に小さく暮らす」を読みました

58歳から 日々を大切に小さく暮らす ショコラ (著) すばる舎 日々の暮らしを綴っていた無名のブロガー(ショコラという女性)が上梓したエッセイ「58歳から 日々を大切に小さく暮らす」。書評などで話題になっていたので(10万部!以上のベストセラー)読ん…

チャラく生きるもまた良し/絲山秋子の「御社のチャラ男」

御社のチャラ男 絲山 秋子 (著) 講談社 久々に絲山秋子の小説を読了。 小説の舞台は北関東にある中企業のとある食品会社。そこの社員たち(社長から総務の女子まで10人くらい)が、一人称で自分や会社の同僚や上司や部下や家族のことなどを語る章立てになっ…

「交通誘導員ヨレヨレ日記」を読みました

交通誘導員ヨレヨレ日記――当年73歳、本日も炎天下、朝っぱらから現場に立ちます 柏耕一 (著) フォレスト出版 著者柏耕一は73歳の編集者兼ライターなのだが、いわゆる「潜伏もの」を上梓するつもりで警備員(交通誘導員)に就いたわけではない。わけあって、…

今村夏子著、全天候型非武装中立少女が主人公の「こちらあみ子」を読みました   

こちらあみ子 今村夏子 (著) ちくま文庫 大学を卒業して、大阪のホテルで清掃のアルバイトをしていた今村夏子は、《ある日突然「明日から休んでください」と言われ、ふと小説を書いてみようと思い、家にあった使いかけのノートに書きはじめたのが29歳のとき…

佐藤亜紀の小説「黄金列車」を読みました!

黄金列車 佐藤 亜紀 (著) 角川書店 はじめての佐藤亜紀作品「黄金列車」読了。 ハンガリーのユダヤ人から没収した財宝を積んだ列車が、1945年4月、ブダペストを離れウィーンを経由しザルツブルグを超えオーストリアの西の端に向かう。その40両にも及ぶ「黄金…

派遣の品格はここにある、古谷田奈月著「神前酔狂宴」

神前酔狂宴 古谷田奈月 (著) 河出書房新社 2020年、自身一発目の小説、これを超える小説に今年出会えるだろうか。 週刊誌や新聞の書評は、内容は全く読まないが、評した人の名前と取り上げられたこと自体を信用してタイトルをチェックしてその書籍を読み始め…

書評執筆陣120人が選んだ「平成の30冊」

2019年8月17日の天声人語に、「高校の国語でこれから、文学が選択科目になる」との哀しい一節があった。国語教育から文学が消えゆく運命にあるということなのか、契約書とかマニュアルなどの実用的な文章を国語の教材にしていく方向なのだという。 国語の教…

「大家さんと僕」と僕/矢部太郎

「大家さんと僕」と僕 矢部 太郎 (著) 新潮社 吉本の漫才師カラテカの矢部太郎の新刊「「大家さんと僕」と僕 」のご紹介。 最新のトーハン調べの総合部門のベストセラー(週間ベスト10)によると、矢部太郎の「大家さんと僕 これから」が第1位で、本書が第8…

レンタルなんもしない人のなんもしなかった話

レンタルなんもしない人のなんもしなかった話 晶文社 「レンタルなんもしない人」がサービスをツイッターで開始した2018年6月から2019年2月までのレンタルのされようが、自身の手により一冊の本になった。 なんもしない人をレンタルしても、基本なんにもして…

平場の月/朝倉かすみ

平場の月 朝倉かすみ 光文社 直近の山本周五郎賞を受賞し、直木賞候補にもなった朝倉かすみの「平場の月」のご紹介。 病院に精密検査に来た男と、その病院の売店のレジでパートをしていた女が偶然出会う。ふたりは地元中学の同級生の50歳の中年男(青砥)と…

熱帯/森見登美彦

熱帯 森見 登美彦 文藝春秋 同じ所をクルクル回っているようで少しずつ進んでいる螺旋状の物語のようだと、感想に書こうとした。でも、同じところを何度も通り過ぎて円運動をしている「フーコーの振り子」と表現したほうが近い物語であった。 一日かかって最…

駒音高く/佐川光晴

駒音高く 佐川 光晴 (著) 実業之日本社 月曜日に会ったランチ仲間と、例によって今読んでる本の話になって、また私は佐川光晴の著書を推薦しておいた。 その推薦図書は「日の出」「牛を屠る」「駒音高く」だった。それぞれの本の私の口頭レビューは5秒くらい…

きりひと讃歌/手塚治虫

きりひと讃歌 手塚 治虫 (著) 小学館 手塚治虫は間違いなく巨人だと思うし、一万円札の肖像にふさわしいお方だと思う。 ところが私は手塚作品をほとんど読んでいない。手塚だけでなく、あまり漫画を読んでいない人生だ。 日本初のテレビアニメ「鉄腕アトム」…

読書間奏文/藤崎彩織

読書間奏文 藤崎 彩織 (著) 文芸春秋社 「ぴあのやらせてください」。このフレーズだけを、何度も何度も何度も連ねた手紙を母親に書いた5歳の少女。それがかなわなければ「世界の終わり」だと思ったのだろう。 彼女は社宅の隣に住む同年の女の子のピアノ発表…

カメラはじめます! /こいしゆうか

カメラはじめます! こいしゆうか (著), 鈴木知子 (監修) サンクチュアリ出版 ニコンD90というデジタル一眼レフ(デジイチ)を買ったのが2010年の4月。18ミリ~200ミリズームレンズ付きで12万円ほどでした。 20代のころにはフィルム用一眼レフカメラを使って…

私が食べた本/村田沙耶香

私が食べた本 村田沙耶香 朝日新聞出版 いい本に出合えた。村田沙耶香の書評をまとめたものがこの一冊になった、タイトルは「私が食べた本」。 マイブログや読書メーターで、私も読書感想のようなものを書いているが、著者の文章を読むと、私のそれは落書き…

箱根0区を駆ける者たち/佐藤俊

箱根0区を駆ける者たち 佐藤 俊 幻冬舎 2019年正月の箱根駅伝は、東海大学の初優勝が記憶に新しい。 その後、茂木健一郎が自らが審査員を務める開高健ノンフィクション賞の候補作「箱根0区を駆ける者たち」が面白いとツイッターで薦めてくれた。 本書の取材…

俺たちの定年後/成毛眞

俺たちの定年後 - 成毛流60歳からの生き方指南 - 成毛 眞 (著) ワニブックス もう定年後5年が経つが、何かの書評で目にしたので、わが暮らしの検証のため本書を読んでみた。 成毛眞は、まだ仕事をしている(事実この本を書いたのも仕事)し、かつてはマイク…

地球星人/村田沙耶香

地球星人 村田 沙耶香 新潮社 「コンビニ人間」を書いた村田沙耶香が、とんでもない小説「地球星人」を書いた。 「とんでもない」とは、とんでもなく下劣だと感じる読者もいれば、私のようにとんでもなく面白く思う読者もいるということ。ただ、私は「コンビ…

2018年私の読んだ本ベスト6

以下一覧は、2018年に私が読んだ主な本です(小説とエッセイ・ノンフィクション別、読了順)。 習慣的に「dマガジン」の週刊誌、「朝日」「サンデー毎日」「文春」「新潮」「現代」「ポスト」と、朝日新聞の書評欄をチェックしていて、面白そうな本をピック…

小説「TIMELESS」/朝吹真理子

TIMELESS 朝吹真理子 新潮社 芥川賞作家の7年ぶりの長編小説だという。受賞以来長らく言葉を磨いていたのだろうか、私には、初めての朝吹真理子である。 ストーリーを語ってもネタバレにならないのが、このような詩的な小説。登場人物の名前もなんだか詩的で…

うつ病九段/先崎学

うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間 先崎 学 (著) 文藝春秋 2017年の将棋連盟の順位戦(B2組)の勝敗成績をリアルタイムで見ていて、怪訝に思ったことがあった。 先崎学九段(48歳)の成績欄の7月以降に、■印の不戦勝が続いていたからだった。何か大…

出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと/花田菜々子

出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと 花田 菜々子 (著) 河出書房新社 本好きのごくごく端っこに属する私は、若い頃から書店はとても好きな空間だった。何かの書評でこの「出会い系サイトで70人と実際に会っ…

世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事/津川友介

世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事 津川 友介 東洋経済新報社 本書で、医師でもありUCLAの助教授でもある著者津川友介が、メタアナリシスに基づいた食品・食事を示してくれた。 メタアナリシスとは、複数の研究の結果を統合し、より高い見地から…

コンビニ人間/村田 沙耶香

コンビニ人間 村田 沙耶香 (文春文庫) 2016年の第155回芥川賞受賞作、村田沙耶香の「コンビニ人間」は、この夏すでに文庫が発売されていた。 村田沙耶香作品は初読み。彼女は、群像新人文学賞優秀賞(2003年)野間文芸新人賞(2009年)三島由紀夫賞(2013年…

珈琲が呼ぶ/片岡義男

珈琲が呼ぶ 片岡義男 (著) 光文社 片岡義男のエッセイ。コーヒーが主役ではないが、各章にコーヒーが登場する長さもまちまちのエッセイが単行本350頁にぎっしり詰まっている。 数年前に著者のエッセイ「歌謡曲が聴こえる」(新潮新書)を読んだ。昭和のノス…

お多福来い来い: てんてんの落語案内/細川貂々

お多福来い来い: てんてんの落語案内 細川 貂々 (著) 小学館 「ツレがうつになりまして。」がベストセラーになった漫画家細川貂々(てんてん)の、落語を紹介した「お多福来い来い: てんてんの落語案内」。本書が刊行されたころに、何かの書評で紹介されてい…