遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

#日本の小説

朝比奈秋の「植物少女」には、圧倒的な生命の尊厳が塗りこめられていました

植物少女 朝比奈 秋 (著) 朝日新聞出版 今期の三島由紀夫賞を受賞した「植物少女」を読みました、どの頁も例外なく胸や目頭が熱くなる作品でした。 主人公の美桜(みお)を出産する時に、脳出血で植物状態になってしまった母、深雪。 美桜は、植物状態の深雪…

高山羽根子の「首里の馬」を読んで幸せになる

首里の馬 高山 羽根子 新潮社 第163回芥川賞(2020年上半期)の受賞作「首里の馬」を読む。 沖縄に暮らす未名子と、彼女と繋がる人たちと1頭の宮古馬の物語。 物語と言っても、起承転結がはっきりしているわけではなく、主人公を中心とした輪郭がはっきりし…

前回の芥川賞、古川真人の「背高泡立草」を読みました  

背高泡立草 古川 真人 (著) 集英社 2日後の7月15日に第163回の芥川賞と直木賞の発表があるが、前回の芥川賞、古川真人の「背高泡立草」を読んだ。 九州の男と関西の女は小説を書く比率が高いと、なんとなくだがそう思う。古川真人も福岡県で生まれ育った作家…

佐藤亜紀の小説「黄金列車」を読みました!

黄金列車 佐藤 亜紀 (著) 角川書店 はじめての佐藤亜紀作品「黄金列車」読了。 ハンガリーのユダヤ人から没収した財宝を積んだ列車が、1945年4月、ブダペストを離れウィーンを経由しザルツブルグを超えオーストリアの西の端に向かう。その40両にも及ぶ「黄金…

平野啓一郎著「ある男」を読みました

平野啓一郎の小説「ある男」のご紹介。 弁護士の城戸は、宮崎に住むかつての依頼人からまた仕事を頼まれる。 依頼人は里枝という女性で、城戸はこの女性の離婚時のトラブルを解決していた。今回の依頼は、里枝が再婚し事故で亡くなった夫「大祐」についての…

東京上野の包容力を感じる物語/中島京子の「夢見る帝国図書館」

夢見る帝国図書館 中島 京子 文芸春秋 明治5年に国立帝国図書館(前身は書籍館=しょじゃくかん)は、当初閲覧室や書架は湯島聖堂に間借りして設立された。その後上野に本格的な図書館の建設計画が推進されたが、日清日露の戦費に建設予算は取られ、当然に蔵…