遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

地球星人/村田沙耶香

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地球星人   村田 沙耶香  新潮社

コンビニ人間」を書いた村田沙耶香が、とんでもない小説「地球星人」を書いた。

「とんでもない」とは、とんでもなく下劣だと感じる読者もいれば、私のようにとんでもなく面白く思う読者もいるということ。ただ、私は「コンビニ人間」で、村田沙耶香にかなり飼いならされてはいる。

地球星人とは、なんとなく宇宙人のことかと思っていたが、何のことはない地球に住む人間のことだ。

主人公の小学生奈月は、毎夏、親の実家である長野に集まった親戚の大人やいとこたちと短い夏を過ごす。
いとこたちのなかの由宇という同い年の少年と奈月は、結婚の契りを交わす。由宇は、自分はポハピピンポボピア星人だと打ち明ける。

いとこ同士の少年少女の素晴らしい長野の夏は、彼ら自身のとある行動がきっかけでで最後の夏となってしまう。

時は移り、大人になった奈月は、家族から逃れるために婚姻のために出会い系サイトに登録する。

《三年前、三十一歳になったばかりの春、私は「すり抜け・ドットコム」というサイトに登録した。
婚姻や自殺、借金など、様々な項目で世間の目をすり抜けたい人たちが、仲間に呼び掛けたり、協力相手を探したりするサイトだ。
私はその中の「婚姻」のページにアクセスし、「性行為なし・子供なし・婚姻届けあり」とチェック項目に印を入れて相手を探した。》

その結果、智臣という男と婚姻関係を結ぶ。夫、智臣も地球星人とは一線を画す人物であった。

本作は、奈月といとこの由宇と夫の智臣の3人の異星人と地球星人との軋轢を描いた強烈な問題小説。村田沙耶香という人は、どこまで行ってしまうのだろう。

実は私はこの3星人に近い存在なので、彼らのあり様はそんなに問題だとは思わないが、ポハピピンポボピア星人は感染するらしいので、中学生の娘がいたらその娘への推薦図書にしたいかと問われれば熟考するだろう。

LGBTに生産性がないと思っている向きには、ジンマシンができるような小説だろう。人間はこうではなくてはならないという規範の中で生きているのが地球星人。その人口密度がいま最も高い国は、我が国であろう。

村田ワールド、愉快である。