遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

#ブックレビュー

今週の書評本 全86冊(2025/1/13~1/19 掲載分 週刊9誌&新聞4紙+婦人公論)

毎週日曜日は、この一週間に週刊誌や新聞などの書評やブックレビューに取り上げられた本を紹介しています。読書の際の参考になれば幸いです。書評内容やレビューについては各誌・HPなどをご覧ください。 今週の書評本 (1/13~1/19 全86冊) *表示凡例◆掲載…

第172回芥川賞と直木賞の発表があり、静謐な印象の受賞者が選ばれました

2025年1月15日に、第172回(2024年下半期)の芥川賞と直木賞の受賞発表がありました。 芥川賞には、安堂ホセ(30)の「DTOPIA」(デートピア)と 鈴木結生(23) の「ゲーテはすべてを言った」が、直木賞には、伊予原新(52) の「藍を継ぐ海」が選ばれまし…

「オーウェル『動物農場』を漫画で読む」を読了しました。

オーウェル『動物農場』を漫画で読む ジョージ・オーウェル ベルナルディ・オディール (イラスト), 田内志文 (翻訳) いそっぷ社 概要:イギリスの作家、ジョージ・オーウェルが1945年に発表した小説。人間から搾取されてきた農場の動物たちが一斉蜂起して「…

2024年に読んだおすすめ本 ベスト6

◆2024年に読んだおすすめ本 ベスト6(読了順) 「成瀬は天下を取りにいく」宮島未奈「パッキパキ北京」綿矢りさ「みどりいせき」大田ステファニー歓人「あなたの燃える左手で」朝比奈秋「ともぐい」河﨑秋子「地雷グリコ」青崎有吾 2018年から続けている「…

2024年1月~12月発表 文学賞 受賞者・受賞作 一覧(全57作)

2024年1月から12月までに発表された主な文学賞の受賞者・受賞作品を順不同で以下に示しました。2024年の受賞作のラインナップとなります。 受賞作のみならず候補作となった作品も何冊か読みましたが、すべて粒よりの作品群だと思います、読書の参考になりま…

外圧を受けない女子高生が主人公の「地雷グリコ」を読みました。

地雷グリコ 青崎 有吾 KADOKAWA 第24回本格ミステリ大賞を2024年5月10日に受賞したのを皮切りに、3日後の5月13日に第77回日本推理作家協会賞を受賞し、その3日後の5月16日には第37回山本周五郎賞を受賞するという快挙、1週間の間に大きな賞を3つ受賞した青崎…

ハン・ガンのノーベル文学賞受賞 地球上から「硝煙臭」が消えるまで...

2024年のノーベル文学賞は、韓国のハン・ガンが受賞しました。 今年は、常連の村上春樹をはじめ多和田葉子や小川洋子ら日本人作家がノーベル文学賞に手が届くか?といった国内メディアの事前予測がありましたが、ハンガンがアジアの女性として初の同賞受賞と…

河﨑秋子の直木賞作品「ともぐい」は大自然と熊と人間たちがスリリングなのでした。

ともぐい 河﨑秋子 新潮社 「土に贖う」以来5年ぶりの河﨑秋子の小説「ともぐい」を読みました。 北海道の大自然と熊と人たち暮らしの物語が、北海道で生まれ育ち今も住む著者の永遠のテーマで、本作は、日露戦争開戦前夜(120年ほど前)の道東、熊が棲む原…

2024年1月~8月発表 文学賞 受賞者・受賞作品一覧表

2024年1月から8月までに発表された主な文学賞の受賞者・受賞作品を順不同で以下に示しました。今秋以降に発表される文学賞も多くありますが、2024年前半の受賞作のラインナップとなります。受賞作のみならず候補作となった作品も何冊か読みましたが、すべて…

一穂ミチの「ツミデミック」 さすがは直木賞でしたよ。

ツミデミック 一穂ミチ 光文社 直木賞受賞作「ツミデミック」を読みました。 「スモールワールズ」「パラソルでパラシュート」「光のとこにいてね」と読んできて、4作目になる一穂ミチ作品でした。 本作「ツミデミック」は、犯罪とパンデミックを合成した造…

朝比奈秋の「あなたの燃える左手で」   おすすめです!

あなたの燃える左手で 朝比奈 秋 河出書房新社 2023年に第51回泉鏡花文学賞と第45回野間文芸新人賞を受賞した朝比奈秋の「あなたの燃える左手で」を読みました。同じ2023年に三島由紀夫賞を受賞した「植物少女」についで、朝比奈作品を読むのは2作目となりま…

成瀬シリーズの第2弾「成瀬は信じた道をいく」を楽しく読みました

成瀬は信じた道をいく 宮島未奈 新潮社 「成瀬は天下を取りに行く」に続く宮島未奈による成瀬シリーズの第2弾「成瀬は信じた道をいく」を楽しく読みました。 「新たな語り部」である成瀬の近所に住む小学生や成瀬の父親など、新しい登場人物たちが成瀬あかり…

ペンの力は人を救う 第171回芥川賞 直木賞の受賞者発表

第171回の直木賞と芥川賞が発表されました。 直木賞の受賞が決まった一穂ミチは大阪市出身・在住の46歳。3回目の候補での受賞でした。《関西大学を卒業後、会社員として働きながら同人誌で作品を発表し、2007年「雪よ林檎の香のごとく」で小説家としてデビュ…

バスキアの絵のようにカラフルな「みどりいせき」(大田ステファニー歓人著)を読みました

みどりいせき 大田ステファニー歓人 集英社 第47回(2023年度)「すばる文学賞」(選考委員 奥泉光、金原ひとみ、川上未映子、岸本佐知子、堀江敏幸)第37回(2024年度)「三島由紀夫賞」(選考委員 川上未映子、高橋源一郎、多和田葉子、中村文則、松家仁之…

ハルノ宵子の「隆明だもの」で吉本家を疑似体験しました。

隆明だもの ハルノ宵子 晶文社 ハルノ宵子の「隆明だもの」を読了しました。 本書が、毎週日曜日に紹介している書評に取り上げられたのは、以下の4回。◆読売新聞: 1/21◆週刊ポスト「ポスト・ブック・レビュー」: 2/9・2/16 号◆週刊新潮「Bookwormの読書万…

2024年1月~5月発表 文学賞 受賞者・受賞作品一覧表

2024年1月から現在までに発表された主な文学賞の受賞者・受賞作品を順不同で以下に示しました。文学賞の発表時期は、春と秋に別れているようで、2024年前半の受賞作のラインナップとなります。 みなさまの読書の参考になりましたら幸いです。 ▼2024年(1月~…

小川哲の小説「君が手にするはずだった黄金について」を読みました

君が手にするはずだった黄金について 小川哲 (著) 新潮社 小川哲による直木賞受賞後初の小説「君が手にするはずだった黄金について」を読みました。 (あらすじ)才能に焦がれる作家が、自身を主人公に描くのは「承認欲求のなれの果て」。認められたくて、必死…

綿矢りさの「パッキパキ北京」で精神勝利法を学びました

パッキパキ北京 綿矢りさ 集英社 コロナ禍の北京で単身赴任中の夫から、一緒に暮らそうと乞われた菖蒲(アヤメ)。愛犬ペイペイを携えしぶしぶ中国に渡るが、「人生エンジョイ勢」を極める菖蒲、タダじゃ絶対に転ばない。過酷な隔離期間も難なくクリアし、現地…

万城目学の「八月の御所グラウンド」に胸が熱くなりました

八月の御所グラウンド 万城目学 文藝春秋 第170回(2023年下半期)の直木賞を受賞した、万城目学の「八月の御所グラウンド」を読みました。 本書には「十二月の都大路上下(カケ)ル」と「八月の御所グラウンド」というタイトルの二編が納められています。 …

幸福小説「成瀬は天下を取りにいく」を読みました

成瀬は天下を取りにいく 宮島未奈 新潮社 小川哲の「地図と拳」の主人公細川が、私的には2023年のもっとも魅力的な登場人物でしたが、2024年のそれは、宮島美奈著「成瀬は天下を取りにいく」の主人公成瀬あかりに決定しました、早くもこの時期にです。 本書…

2023年度 文学賞受賞「小説(中堅作家)・ノンフィクション等」全24作一覧

年明けから、当記事では2023年度の「新人文学賞」や「公募新人賞」の受賞作を紹介してきました。 https://toship-asobi.hatenablog.com/entry/2024/01/16/2128072023年の主な新人文学賞受賞作一覧https://toship-asobi.hatenablog.com/entry/2024/01/18/1357…

今週の書評本 全89冊(2024年 1/15~1/21 掲載分 週刊9誌&新聞3紙)

毎週日曜日は、この一週間(1/15~1/21)に週刊誌や新聞などの書評に取り上げられた旬の本を紹介しています。書評内容については各誌・HPなどをご覧ください。 今週の書評本 *表示凡例◆掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数書籍タイトル 著者.編者 出版社 税…

新人作家の登竜門「公募新人賞」2023年受賞作一覧

昨日(1月17日)は第170回芥川賞・直木賞の発表があり、芥川賞は九段理江(33)の「東京都同情塔」に、直木賞は万城目学(47)の「八月の御所グラウンド」河﨑秋子(44)の「ともぐい」にそれぞれ決まりました。 九段理江は2度目のノミネートでしたが、すで…

広く読まれたい市川沙央の「ハンチバック」

ハンチバック 市川沙央 文藝春秋 今年最後に読了した本は、市川沙央の「ハンチバック」でした。 ハンチバック(せむし)の意味も知らずに読み始めたのですが、著者が筋力などが低下する筋疾患を持った女性だということは知っていました。私には、市川は実年…

アンニュイな小説家鈴木涼美の「グレイスレス」を読みました

グレイスレス 鈴木涼美 文藝春秋 鈴木涼美の小説「グレイスレス」を読みました。著者の作品は初読みでした。 主人公の聖月(みづき)はアダルトビデオ業界で女優のメイクをする仕事に従事しています。優美でない(グレイスレス)な現場で臨場感ある仕事場風…

乗代雄介の「それは誠」を読了。心温まる小説でした。

それは誠 乗代雄介 文藝春秋 第169回芥川賞候補作に選ばれた、いま最も期待を集める作家の最新中編小説。修学旅行で東京を訪れた高校生たちが、コースを外れた小さな冒険を試みる。その一日の、なにげない会話や出来事から、生の輝きが浮かび上がり、えも言…

月村了衛の「香港警察東京分室」を読みました

香港警察東京分室 月村了衛 小学館 第169回(2023年上半期)直木賞候補になった月村了衛の「香港警察東京分室」を読みました。 【あらすじ】日本と中国の警察が協力する―インターポールの仲介で締結された「継続的捜査協力に関する覚書」のもと警視庁に設立…

話題のノンフィクション「母という呪縛 娘という牢獄」を読みました

母という呪縛 娘という牢獄 齊藤彩 講談社 《深夜3時42分。母を殺した娘は、ツイッターに、「モンスターを倒した。これで一安心だ。」と投稿した。18文字の投稿は、その意味するところを誰にも悟られないまま、放置されていた。2018年3月10日、土曜日の昼下…

永井紗耶子の「木挽町のあだ討ち」は格調高い実事(じつごと)ミステリーでした

木挽町のあだ討ち 永井紗耶子 (著) 新潮社【あらすじ】ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙はたくさんの人々から賞賛された。二年…

一穂ミチの「光のとこにいてね」を読みました

光のとこにいてね 一穂ミチ 文藝春秋 一穂ミチの「光のとこにいてね」を読みました。著者の作品を読むのはこれで3冊目で、いま本が売れる作家の仲間入りを果たしていると思しき著者ならではの面白い力作でした。 7歳で偶然出会った同い年の女性、結珠(ゆず…