遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

#ノンフィクション、エッセイ

2020年に読んだおすすめ本ベスト6

3年続けてきました、私の読んだ本の中からおすすめ本のご紹介。 例によって、読んだ冊数が少ないので、ノンフィクションとフィクションそれぞれ3冊の推薦です。この1年はほとんど引きこもった生活だったにもかかわらず、手を伸ばせば読むべき本が置いてある…

〇〇を断つ/ポスト・コロナ

コロナによる自粛で、ライフスタイルが少し変わったというお方が多くいらっしゃるかもしれない。以下に紹介する本は、新聞や週刊誌の書評で見かけたものだが、何かを断つことが共通している。 ◆町田康 「しらふで生きる」大酒飲みで酒での失敗が後を絶たない…

「大家さんと僕」と僕/矢部太郎

「大家さんと僕」と僕 矢部 太郎 (著) 新潮社 吉本の漫才師カラテカの矢部太郎の新刊「「大家さんと僕」と僕 」のご紹介。 最新のトーハン調べの総合部門のベストセラー(週間ベスト10)によると、矢部太郎の「大家さんと僕 これから」が第1位で、本書が第8…

レンタルなんもしない人のなんもしなかった話

レンタルなんもしない人のなんもしなかった話 晶文社 「レンタルなんもしない人」がサービスをツイッターで開始した2018年6月から2019年2月までのレンタルのされようが、自身の手により一冊の本になった。 なんもしない人をレンタルしても、基本なんにもして…

読書間奏文/藤崎彩織

読書間奏文 藤崎 彩織 (著) 文芸春秋社 「ぴあのやらせてください」。このフレーズだけを、何度も何度も何度も連ねた手紙を母親に書いた5歳の少女。それがかなわなければ「世界の終わり」だと思ったのだろう。 彼女は社宅の隣に住む同年の女の子のピアノ発表…

カメラはじめます! /こいしゆうか

カメラはじめます! こいしゆうか (著), 鈴木知子 (監修) サンクチュアリ出版 ニコンD90というデジタル一眼レフ(デジイチ)を買ったのが2010年の4月。18ミリ~200ミリズームレンズ付きで12万円ほどでした。 20代のころにはフィルム用一眼レフカメラを使って…

箱根0区を駆ける者たち/佐藤俊

箱根0区を駆ける者たち 佐藤 俊 幻冬舎 2019年正月の箱根駅伝は、東海大学の初優勝が記憶に新しい。 その後、茂木健一郎が自らが審査員を務める開高健ノンフィクション賞の候補作「箱根0区を駆ける者たち」が面白いとツイッターで薦めてくれた。 本書の取材…

俺たちの定年後/成毛眞

俺たちの定年後 - 成毛流60歳からの生き方指南 - 成毛 眞 (著) ワニブックス もう定年後5年が経つが、何かの書評で目にしたので、わが暮らしの検証のため本書を読んでみた。 成毛眞は、まだ仕事をしている(事実この本を書いたのも仕事)し、かつてはマイク…

うつ病九段/先崎学

うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間 先崎 学 (著) 文藝春秋 2017年の将棋連盟の順位戦(B2組)の勝敗成績をリアルタイムで見ていて、怪訝に思ったことがあった。 先崎学九段(48歳)の成績欄の7月以降に、■印の不戦勝が続いていたからだった。何か大…

出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと/花田菜々子

出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと 花田 菜々子 (著) 河出書房新社 本好きのごくごく端っこに属する私は、若い頃から書店はとても好きな空間だった。何かの書評でこの「出会い系サイトで70人と実際に会っ…

珈琲が呼ぶ/片岡義男

珈琲が呼ぶ 片岡義男 (著) 光文社 片岡義男のエッセイ。コーヒーが主役ではないが、各章にコーヒーが登場する長さもまちまちのエッセイが単行本350頁にぎっしり詰まっている。 数年前に著者のエッセイ「歌謡曲が聴こえる」(新潮新書)を読んだ。昭和のノス…

お多福来い来い: てんてんの落語案内/細川貂々

お多福来い来い: てんてんの落語案内 細川 貂々 (著) 小学館 「ツレがうつになりまして。」がベストセラーになった漫画家細川貂々(てんてん)の、落語を紹介した「お多福来い来い: てんてんの落語案内」。本書が刊行されたころに、何かの書評で紹介されてい…

牛を屠る/佐川光晴

牛を屠る 佐川 光晴 (著) 双葉文庫 1か月前に読了した佐川光晴の「日の出」。 https://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/68885255.html 「日の出」は、明治期に戦争忌避のためふるさとを捨てた青年と、彼を取り巻く静謐な人たちを描いた青春群像小説である。 こん…

日本軍兵士/吉田裕

日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 吉田 裕 (著) 中公新書 太平洋戦争での日本人死者は、民間人が80万人、軍人・軍属が230万人の計310万人。そして、その9割が戦争末期、1944年以降のわずか1年ほどのあいだに亡くなったと推算されるという。 兵士は、敵の…

24歳の僕がオバマ大統領のスピーチライター?! /D・リット

24歳の僕が、オバマ大統領のスピーチライターに?! デビッド・リット (著), 山田美明 (翻訳) 光文社 本書「24歳の僕が、オバマ大統領のスピーチライターに?!」の著者デビッド・リットは、オバマ大統領のスピーチ・ライターだった。2009年に24歳でホワイトハウ…

複眼の映像―私と黒澤明/橋本忍

橋本忍さんが亡くなられた。享年百歳だった。謹んでご冥福をお祈りします。 前に橋本さんのエッセイのような自伝のような著書を紹介した。映画が好きで黒澤組が好きな私にとってはすこぶる面白い読み物で、夢中になって読んだ。 黒澤組に橋本さんがいなかっ…

真実/梶芽衣子

真実 梶 芽衣子 (著) 清水まり(構成) 文芸春秋 1965年に映画デビューした梶芽衣子(昭和22年1947年生まれ)の芸能活動を中心にまとめられた自署「真実」のご紹介。 少し前、テレビの対談番組「サワコの朝」に、梶が出ていたのだが、素の彼女を見るのは初め…

これからの日本,これからの教育/前川喜平, 寺脇研

これからの日本、これからの教育 前川喜平, 寺脇研 (著) ちくま新書 加計問題で時の人となった前文科省事務次官の前川喜平と、ワイドショーなどでもおなじみの「ミスター文部省」と言われた寺脇研が、この国の行政から教育までを対談形式で語った「これか…

大家さんと僕/矢部太郎

大家さんと僕 矢部 太郎 (著) 新潮社 芸風も体格も、吹けば飛ぶような貧弱な芸人矢部太郎。 その彼のベストセラーエッセイ「大家さんと僕」を読んだ。 本書は文字だけで書かれたエッセイかと思っていたら、全編マンガイラストで描かれたエッセイだった。税別…

SHOE DOG(シュードッグ) /フィル・ナイト

SHOE DOG(シュードッグ) フィル・ナイト 大田黒奉之 (訳) 東洋経済新報社 オレゴン州ポートランド出身で、ナイキの創業者フィル・ナイト(1938年生まれ)の半生を綴った自伝「SHOE DOG」のご紹介。(オレゴン州は、西海岸、北にシアトルのあるワシントン州…

不死身の特攻兵/鴻上尚史

不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか 鴻上尚史 (著) (講談社現代新書) 太平洋戦争時、海軍の特攻隊は「カミカゼ」として知らない人がいないほど有名だが、陸軍にも特攻隊があった。 陸軍の最初の特攻隊が「万朶隊(ばんだたい)」と呼ばれる小隊(整…

鳥類学者だからって鳥が好きだと思うなよ/川上和人

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。 川上 和人 (著) 新潮社 Amazonのカテゴリ「鳥類学」ではベストセラー1位の「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」のご紹介。 本書は、一般書籍の部でも、ベストセラーになっているようだ。 鳥の研究は…

Black Box/伊藤詩織

Black Box 伊藤詩織 文芸春秋 ジャーナリストの伊藤詩織が、当時のTBSのワシントン支局長に東京で準強姦罪の被害に遭った例の一連の事件。昨日、衆議院の予算委員会質問でそのことが取り上げられており、委員会一般傍聴席には伊藤の姿があった。 本書は、被…

飯場へ/渡辺 拓也

飯場へ: 暮らしと仕事を記録する 渡辺 拓也 (著) 手っ取り早くとにかく仕事にありついて現金を手にしようとすれば、「寄せ場」に行ってどこかの工事現場で一日「手元」をすれば、その日に賃金が入ってくる。 「寄せ場」とは、山谷(東京)釜ヶ崎(大阪)寿町…

東大卒貧困ワーカー/中沢彰吾

東大卒貧困ワーカー 中沢 彰吾 (著) 新潮新書 私の比較的最近の読書レビューの中で、「日本の闇」を扱った書籍はざっと以下の通り。 日本会議の研究 菅野 完 (著) https://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/68540671.html ルポ ニッポン絶望工場 出井 康博 (著) h…

みみずくは黄昏に飛びたつ /川上未映子・村上 春樹

みみずくは黄昏に飛びたつ 川上 未映子、村上 春樹 (新潮社) 今回は、芥川賞作家川上未映子(40)が村上春樹(68)にインタビューした「みみずくは黄昏に飛びたつ」のご紹介。本書は、2017年4月に出版された。 インタビューは、全4章に分かれていて、第1章…

日本会議の研究/菅野完

日本会議の研究 菅野 完 (扶桑社新書) 菅野完の「日本会議の研究」は、今年度の大宅壮一ノンフィクション賞の候補作になり、新たに設けられたネットでの投票による読者賞に輝いた。候補作のうちで読者に最も支持された1冊になったのだが、楽しくはないが面白…

小倉昌男 祈りと経営/森健

小倉昌男 祈りと経営: ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの 森 健 (著) 小学館 今回、私の読書感想は、2017年大宅壮一ノンフィクション大賞受賞「小倉昌男 祈りと経営」をご紹介。本書は、2015年に第22回小学館ノンフィクション大賞受賞も受賞している。 …

ニッポン絶望工場/出井康博

ルポ ニッポン絶望工場 出井 康博 (著) (講談社+α新書) 2016/7/21 今日ご紹介の1冊は「ルポ ニッポン絶望工場」。著者は、他の著作タイトルでも社会派だろうと想像できる、出井康弘という1965年生まれのフリーのジャーナリスト。 扱われた素材は、東南アジア…

会社人間だった父と偽装請負だった僕/赤澤竜也

会社人間だった父と偽装請負だった僕―さようならニッポン株式会社 赤澤 竜也 (著) ダイヤモンド社 2009/1/30 経営会議の席上、頭取の安倍川澄夫が、向かいで居眠りする赤澤に、 「おいどうしたんだ」と声をかけた。 堂々とした体格でエネルギッシュな赤澤が…