遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

#その他文学

折々のうた/大岡信

大岡信さんが亡くなられた、謹んでご冥福をお祈りします。 俵万智が「サラダ記念日」の一首が「折々のうた」で取り上げられた時のことを以下のようにツイートしている。 俵万智‏ @tawara_machi 「白菜が赤帯しめて店先にうっふんうっふん肩を並べる」この歌…

特捜部Q ―檻の中の女/ユッシ・オールスン

特捜部Q ―檻の中の女― ユッシ・エーズラ・オールスン 吉田奈保子 (訳) 〔ハヤカワ文庫〕 デンマークの小説を初めて読んだ。翻訳者はドイツ文学者なので、おそらくデンマーク語をドイツ語訳された本書「特捜部Q」を邦訳したと思われる。本書は、ドイツでは大…

「折々のうた」から「折々のことば」へ

【2007年のわが記事の再掲載】 折々のうた 大岡 信 (岩波新書) 朝日新聞の朝刊1面の連載、「折々のうた」が2007年3月31日で最終回を迎えた。連載が始まったのが、1979年のことである。我が家は私が物心付いた頃から毎日新聞を購読していたので、折々のうた…

闇の守り人/上橋菜穂子

闇の守り人 上橋 菜穂子 (新潮文庫) 【あらすじ】 女用心棒バルサは、25年ぶりに生まれ故郷に戻ってきた。おのれの人生のすべてを捨てて自分を守り育ててくれた、養父ジグロの汚名を晴らすために。短槍に刻まれた模様を頼りに、雪の峰々の底に広がる洞窟を抜…

精霊の守り人/上橋菜穂子

精霊の守り人 上橋菜穂子 (新潮文庫) あらすじ・内容 30歳の女用心棒バルサを主人公に、人の世界と精霊の世界を描いたハイファンタジー。『闇の守り人』『夢の守り人』『神の守り人(来訪編)』『神の守り人(帰還編)』と続く「守り人」シリーズの第1弾。 1…

俳句ナンダこりゃコレクション

かつて、NHKで楽しい愉快な、でも半ば驚きの俳句紹介番組を見た。 番組名は、「俳句ナンダこりゃコレクション」。 著名人が、五七五にとらわれない自由律だったり、季語の存在しない無季だったりする名句を持ち寄り、その句の解釈や合評をするという、句…

天の梯―みをつくし料理帖/高田郁

天の梯―みをつくし料理帖 高田 郁 (ハルキ文庫) 5年間にわたり全10作が刊行された「みをつくし料理帖」シリーズの最終作「天の梯(そらのかけはし)」を読了。 まだ5年しかたっていないのかと思うほど、長く感じたシリーズだった。24歳の主人公の澪が、つる…

日本一短い「母」への手紙

日本一短い「母」への手紙 一筆啓上 (角川文庫) 「るり姉」を読んでいて、「日本一短い「母」への手紙」を思い出した。 以下、2007年の記事を再掲。 お母さん、 雪の降る夜に私を生んで下さってありがとう。 もうすぐ雪ですね。(大阪51歳男性) この手…

夏天の虹/高田郁

夏天の虹―みをつくし料理帖 高田郁 (ハルキ文庫) 想いびとである小松原と添う道か、料理人として生きる道か・・・・・・澪は、決して交わることのない道の上で悩み苦しんでいた。「つる家」で料理を旨そうに頬張るお客や、料理をつくり、供する自身の姿を思…

読みなおす一冊/朝日新聞学芸部編

読みなおす一冊 朝日新聞学芸部編 (朝日選書) 「読みなおす一冊」は、朝日新聞の日曜版に3年間に渡って掲載された、 名作を著名人が紹介するという企画を一冊にまとめた書物である。 この企画の一回目が「北杜夫さんと星の王子さまを読む」で、 以下名作…

漢字と読書

『風信帖(ふうしんじょう)』 空海書 (国宝:京都・東寺蔵) 著作権も特許もない、誰がどう利用としようとまったく問題のない「漢字」、 それを利用して集金システムを作り上げたさる親子は、賢いと言えば賢い。 元手は一切かからない漢字が商品で、しかも…

長靴をはいた猫/シャルル・ペロー

長靴をはいた猫 シャルル ペロー 渋澤 龍彦 (訳) (河出文庫) 1970年、女性誌「アンアン」の創刊企画で、 渋澤龍彦がシャルル ペローの童話を翻訳して掲載した。 それが文庫化されたものが本書である。 多くの童話と接してきて、 私にとって最も胸のすく…

脱出記/スラヴォミール・ラウイッツ

脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち (ヴィレッジブックス 文庫) スラヴォミール・ラウイッツ (著), 海津 正彦 (翻訳) この本は、実話をもとに1956年にイギリスで出版され、 当時のベストセラーになったという、 本邦では数年前に始めて翻訳され…

シドニー! /村上 春樹

シドニー! 村上 春樹 文芸春秋 オーストラリアの首相が「盗まれた世代」に関して、 議会で謝罪する。 盗まれた世代(The Stolen Generation)とは、オーストラリア政府や教会によって家族から引き離されたオーストラリア・アボリジニとトレス海峡諸島の混血…

走ることについて語るときに僕の語ること/村上春樹

走ることについて語るときに僕の語ること 村上 春樹 (文芸春秋) 2週間ばかり体調が思わしくなく、 夜はおとなしく早くベッドに入って、 この本を読んで快復を待っていた日々。 「走ることについて語るときに僕の語ること」、 表紙の後姿は、上半身裸の村上…

総員玉砕せよ! /水木しげる

総員玉砕せよ! 水木 しげる (講談社文庫) 「ゲゲゲの鬼太郎」の作者水木しげるの、戦記漫画である。 水木は左腕をラバウルで米軍の爆撃のために失っている。 この「総員玉砕せよ!」は、太平洋戦争下、 ニューギニアのラバウルでの、自らの軍隊体験を描いた…

自家製文章読本/井上ひさし

「自家製 文章読本」「私家版 日本語文法」 井上ひさし (文春文庫) 「自家製 文章読本」ならびに「私家版 日本語文法」 ともに著者は井上ひさしである。 私のハードカバーの奥付を見ると、「文章読本」は1984年(昭和59年)に、 「日本語文法」は19…

私の釣魚大全/開高健

新婚旅行中の部下に、今は何処にいる?とメールすれば、 いま平泉にいると返ってきた。 本来ならフィレンツェあたりにいたはずなのに、 なぜか、みちのくをブラブラしている。 ま、フィレンツェでも平泉でもどちらでもいいだろう、 最愛の人との新婚旅行だか…

小説教室/高橋源一郎

一億三千万人のための小説教室 高橋 源一郎 高橋源一郎は、私の大好物の年一回のNHK番組 「詩のボクシング」のリンク下に居る司会者であるが、 詩人ではないし、 夏競馬のTV中継の司会者でもあるが、 かといって競馬評論家でもない。 小説家である。 室…

折々のうた/大岡信

折々のうた 大岡 信 (岩波新書) 朝日新聞の朝刊1面の連載、「折々のうた」が3月31日で最終回を迎えた。 連載が始まったのが、1979年のことである。 我が家は私が物心付いた頃から毎日新聞を購読していたので、 折々のうたは、リアルタイムで楽しんだ…

ニッポン・サバイバル/姜尚中

ニッポン・サバイバル―不確かな時代を生き抜く10のヒント 姜 尚中 朝ナマテレビでおなじみ、イケメン東大教授、 姜尚中(カン サンジュン)の若者たちへのメッセージが詰まった1冊。 かつて、「世の中、馬鹿が多くて疲れません?」と、 桃井かおりに言わせた…

21世紀に生きる君たちへ/司馬遼太郎

対訳 21世紀に生きる君たちへ 司馬 遼太郎 ドナルド キーン (監訳), ロバート ミンツァー (翻訳) 人間は、鎖の一環ですね。はるかな過去から未来にのびてゆく 鎖の。 人間のすばらしさは、自分のことを、たかが一環かと は悲観的におもわないことです。ふし…

文壇/野坂昭如

文壇 野坂 昭如 (文春文庫) ここに実名で書かれた作家達の大半は逝去している。 しかし、野坂昭如の彼らをしのぶ心根は、 畏怖や嫉妬や軽蔑などがないわけではないが、 親愛を基調としている。 野坂が「伊東へ行くならはとや」や「おもちゃのチャチャチャ」…

「本好きへの100の質問」(其の四)

[76] 「あの作家に、これだけは言いたい」……ひとことどうぞ! まだ世に出ていない作家に、めげずに頑張って!、 もう世に出て稼いでいる作家に、感動させて! [77] 紙幣の肖像、私ならこの文豪を選ぶ! 芥川龍之介、森鴎外、正岡子規なんかどうだろう。 [78]…

「本好きへの100の質問」(其の三)

[61] 憧れのキャラクターを教えてください。 これは多すぎて困ったが、うーん、 ブライアン・フリーマントル「消されかけた男」のチャーリー・マフィンか、 http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/6451818.html コリン・デクスター「キドリントンから消えた娘」…

「本好きへの100の質問」(其の二)

[34] 何度も読み返してしまうような本はありますか? その本のタイトルは。 特定の本は無し。 ものが溢れている今と違って、私の子どもの頃は1冊の本を何度も何度も読んだ。 本を買ってもらう機会は少なかったが、1冊で何年も楽しめた気がする。 [35] おき…

「本好きへの100の質問」(其の一)

「本好きへの100の質問」 其の一 お気に入りブログのピアニストらぷさんの、 「ピアノ弾きへの100の質問」の向こうを張って、 「本好きへの100の質問」に挑戦。 [1] 本が好きな理由を教えてください。 未知への旅のようなところ。心だけ別世界へ飛んで…

嘘つきアーニャの真っ赤な真実/米原万里

嘘つきアーニャの真っ赤な真実 米原 万里 (角川文庫) この一冊を斉藤美奈子が薦めるので、 矢も盾もたまらず会社帰りの最寄の駅のkioskで買い求めた。 1960年に米原万里は、チェコはプラハのソビエト学校に通う小学生であった。 「嘘つきアーニャの真っ…

森のうた/岩城 宏之

森のうた―山本直純との芸大青春記 岩城 宏之 (著) 講談社文庫 価格: ¥600 (税込) まだ、私が働き始めたばかりの頃、 日本フィルが京都でブラームスの交響曲1番の演奏会を開いた。 私は、学生時代にカール・ベーム指揮のウィーンフィル来日公演を聴いて…

波のうえの魔術師/石田衣良

波のうえの魔術師 文春文庫 石田 衣良 (著) 価格: ¥500 (税込) 先月上京した際、新幹線の隣に居合わせた若者。 スーツを着て、大きな鞄を持っていたので、 出張の行きか帰りかのビジネスマンといった風体だった。 私は隣でしばらく眠っていたのだが、目が…