遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

精霊の守り人/上橋菜穂子

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あらすじ・内容
   30歳の女用心棒バルサを主人公に、人の世界と精霊の世界を描いたハイファンタジー。『闇の守り人』『夢の守り人』『神の守り人(来訪編)』『神の守り人(帰還編)』と続く「守り人」シリーズの第1弾。
   100年に一度卵を産む精霊〈水の守り手ニュンガ・ロ・イム〉に卵を産みつけられ、〈精霊の守り人〉としての運命を背負わされた新ヨゴ皇国の第二王子チャグム。母妃からチャグムを託された女用心棒バルサは、チャグムに憑いたモノを疎ましく思う父王と、チャグムの身体の中にある卵を食らおうと狙う幻獣ラルンガ、ふたつの死の手から彼を守って逃げることになるのだが・・・

本の情報テレビ番組「すずらん本屋堂」の1月9日放送分に、国際アンデルセン賞受賞作家としてゲスト出演した上橋菜穂子。この作家を初めて知り、「精霊の守り人」をはじめとする「守り人(もりびと)」シリーズのことも初めて知る。

さっそく「精霊の守り人」を購入、まず妻が読み、うん面白かったとの感想。このほど私も読了。

このシリーズは、1996年から単行本として出版され、2007年に「天と地の守り人 第三部 新ヨゴ皇国編」で物語が完結した後、同じ2007年から第一作の「精霊の守り人」が文庫化された。

上橋は本書のあとがきで、「子どものためだけに物語を書いたことは一度もありません。」と記しているが、文庫化にあたっては文章表現はそのままに、大人向けに漢字を多く含む文章に直したという。ただし、漢字にはルビがふってあり子どもたちにも読めるようになっている。

冒険ファンタジーはあまりなじみがないが、読み進めてすぐ、大好きなゲーム「ドラゴン・クエスト」シリーズや、映画「ロード・オブ・ザ・リング」を想起した。文庫解説の恩田陸が、異世界ファンタジーの御三家「ナルニア国ものがたり」「ゲド戦記」「指輪物語」に自分は乗り遅れたと書いているが、私は御三家に乗ることさえしておらず、かろうじて映画で「指輪物語ロード・オブ・ザ・リング」の世界を知るだけである。

本書は異世界が舞台だが、古代中国のような大きな世界、山河を感じる。でてくる固有名詞はカタカナで、小学生の私ならちょっと困ったかもしれないし、いま60歳を超えて初めて接することへの記憶力がおぼつかない身としては、少し努力を要する部分もあるにはあった。
しかし、この守り人シリーズの序章は「後を引く魅力」が満載である。とりわけ、30歳の短槍(たんそう)つかいの主人公バルサは、古今東西の読み手を魅了する。もちろん、続くシリーズは楽しんで読み続けていくつもりである。


精霊の守り人」は野間児童文芸新人賞を受賞し、以後「守り人シリーズ」は路傍の石文学賞産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、日本児童文学者協会賞巌谷小波文芸賞小学館児童出版文化賞野間児童文芸賞産経児童出版文化賞推薦作品、英訳された本書で The Batchelder Awardを受賞。