遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

俳句ナンダこりゃコレクション

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かつて、NHKで楽しい愉快な、でも半ば驚きの俳句紹介番組を見た。
番組名は、「俳句ナンダこりゃコレクション」。

著名人が、五七五にとらわれない自由律だったり、季語の存在しない無季だったりする名句を持ち寄り、その句の解釈や合評をするという、句会のような番組だった。

その句会の主宰が金子兜太と、いとうせいこう
句ごころのない私が見れば、なんじゃこりゃという句会のはずが、選者のプレゼン、合評、解説のおかげで、すごい句を紹介してもらった気分になった。

番組を作ったこの当時のNHKもえらい。

小説家より詩人がすごいと思うけれど、俳人もすばらしいなあと思い知る。蛍にだって糸瓜(へちま)にだって成り下がる。
選ばれし俳句には川柳にはない宇宙観がある、少ない字句からこの広がりはなんなんだ、そういう意味でなんだこりゃなのかもしれない。

私はそんな高尚な趣味はないが、俳句を詠めば、身の周り全方位からいろんなことが見えてきて、心が澄んだ状態になるに違いない。(ブログでもそれに近いものがあるのだけれど…。)

番組で取り上げられた二十句、そのすごさをご紹介する、解釈はご自由に!

  福助のお辞儀は永遠に雪が降る     鳥居真理子
 
  唇は黒いマスクの下に惜しげもなくなくふる雪で必死の暮しも阻む冬はなほ更に思う 橋本夢道

  じゃんけんで負けて蛍に生まれたの 池田澄子

  足のうら洗へば白くなる  尾崎放哉

  青蛙おのれもペンキぬりたてか  芥川龍之介

  露人ワシコフ叫びて石榴打ち落す  西東三鬼

  性格が八百屋お七シクラメン  京極杞陽

  粉屋が哭く山を駆けおりてきた俺に  金子兜太

  法医學・櫻・暗黒・父・自瀆   寺山修司

  とととととととととと脈アマリリス   中岡敏雄

  ワタナベのジュースの素です雲の峰   三宅やよい

  噴水や戦後の男指やさし  寺田京

  戦争が廊下の奥に立ってゐた  渡辺白泉 

  春は曙そろそろ帰ってくれないか  櫂美千子

  まっすぐな道でさみしい  種田山頭火
  
  夜のダ・カポ ダ・カポのダ・カポ 噴火のダ・カポ   高柳 重信

  鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし  三橋鷹女  (鞦韆:ブランコの意)

  栃木にいろいろ雨のたましいもいたり   阿部完市

  魔がさして糸瓜となりぬどうもどうも  正木ゆう子

  夏みかん酸っぱしいまさら純潔など  鈴木しづ子