遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

闇の守り人/上橋菜穂子

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闇の守り人  上橋 菜穂子   (新潮文庫)

【あらすじ】
女用心棒バルサは、25年ぶりに生まれ故郷に戻ってきた。おのれの人生のすべてを捨てて自分を守り育ててくれた、養父ジグロの汚名を晴らすために。短槍に刻まれた模様を頼りに、雪の峰々の底に広がる洞窟を抜けていく彼女を出迎えたのは―。バルサの帰郷は、山国の底に潜んでいた闇を目覚めさせる。壮大なスケールで語られる魂の物語。読む者の心を深く揺さぶるシリーズ第2弾。


守り人シリーズ」の第2作目、「闇の守り人」を読了。(読書スピード遅すぎ)

短槍使いの女用心棒バルサと、訳あって親友の娘である6歳の彼女と逃避行を続け、追手を倒し彼女を無敵の槍使いに育て上げた今は亡きジグロ。ここまでの流れは、第1作「精霊の守り人」と同じ。

バルサは31歳。彼女は25年ぶりに生まれ故郷に帰ることにする、故郷を後にしたときに通ってきた闇の洞窟を逆にたどって。道に迷うことのないように、槍の柄に洞窟内の道が模様のように彫られている。

クライマックスに到達するまで、バルサをサポートしてくれる小さい山の民たちは、ロード・オブ・ザ・リングホビットとイメージが重なり、本作がファンタジーであることの色付けを濃くする。ほっとする存在感がある。

31歳の生身の女用心棒とあの世にいる養父ジグロの心の物語は、ダンジョン(地下迷宮)のような暗闇のステージでクライマックスを迎え終結に至る。と書いてしまえば簡単なことなのだが、ファンタジーならではの楽しい試みと、実に現実的な誰もが身につまされるような人生模様が感じられる。