遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

長靴をはいた猫/シャルル・ペロー

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 長靴をはいた猫  シャルル ペロー    渋澤 龍彦 (訳)  (河出文庫)


1970年、女性誌「アンアン」の創刊企画で、

渋澤龍彦がシャルル ペローの童話を翻訳して掲載した。

それが文庫化されたものが本書である。


多くの童話と接してきて、

私にとって最も胸のすくストーリーが展開するのが、

長靴をはいた猫」である。


粉屋の男が3人の息子に遺した財産は、粉ひき小屋とロバと猫であった。

長男は粉ひき小屋をとり、次男はロバをとり、

三男には、猫が残った。


大人になって読むペローの翻訳も、

この猫が三男のために大活躍をする、

私の記憶どおりのストーリー展開であった。


夢見る少年だった私は、哀愁も悲しみもない、

ファンタジーのようなこの話の展開が大好きであった。

200年後のデュマを彷彿とさせる、

フランス活劇の原典のようなお話である。


他に「赤頭巾ちゃん」「サンドリヨン(シンデレラ)」「眠れる森の美女」

など、ペローの珠玉の童話が全9編挿入されている。


赤頭巾以外は何も身に付けていない赤頭巾ちゃんや、

紡錘(つむ)竿で手を傷つけられ100年も眠る美女など、

訳者のあとがきではっと気付く、

不思議で性的な印象のお話が満載である。


また、各編でしばし登場する仙女たちが印象的。

かぼちゃを馬車に変えたり、

言葉を発するたびに自分の口から宝石が出てきたり、

そんな幸せを運んでくれる女たち。

彼女たちは、清く正しく美しい生活をしていると

目の前に現れ出でるのである。


幸せは、清く正しい人に等しく訪れるのであろう。


表紙をはじめ、片山健の挿絵もセンスがよくて、

とてもとても印象的である。


 目次

   長靴をはいた猫

   赤頭巾ちゃん

   仙女たち

   サンドリヨン

   巻き毛のリケ

   眠れる森の美女

   青髭

   親指太郎

   驢馬の皮