遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

#小説

又吉直樹が買った本

天声人語に、芥川賞受賞の又吉直樹が取り上げられた。 そのなかに、《「僕の生活のリズムは溜息(ためいき)と舌打ちによってのみ出来ている」。10代の頃に書いたこの言葉を後に読み返し、あまりの暗さに驚いたそうだ》とある。 誰にでもそういう時代(人生…

何冊読んだ?/必読小説1000冊

西暦2015年、半分を折り返してしまった。 私の今年の目標に「本を○冊読む」という項目があったのだが、今のところまだ8冊を読んだだけ(涙)。新聞やニュースやツイッターに目をやる時間が多くなり、読書の時間が少なくなったのである、という言い訳。安保法…

夏の庭/湯本香樹実

夏の庭―The Friends 湯本 香樹実 (新潮文庫) 今年のカンヌ映画祭、「ある視点部門」に出品された「岸辺の旅」。上映が終わったあと拍手が鳴りやまなかったという。 黒澤清はこの部門(パルマドールではない)で監督賞を獲得した。主演は、深津絵里と浅野忠信…

神聖喜劇〈第1巻〉/大西巨人

神聖喜劇〈第1巻〉大西 巨人 (光文社文庫) 内容 一九四二年一月、対馬要塞の重砲兵聯隊に補充兵役入隊兵百余名が到着した。陸軍二等兵・東堂太郎もその中の一人。「世界は真剣に生きるに値しない」と思い定める虚無主義者である。厳寒の屯営内で、内務班長・…

「坊ちゃん」の登場人物

秋に松山へ行ったときに、道後温泉本館のすぐそばで、お土産のじゃこ天を買った。そこは坊ちゃん広場と呼ばれ、漱石の小説「坊ちゃん」の登場人物のコミカルな人形が置いてあり、記念撮影の演出にひと役買ってくれていた。(画像右から赤シャツ、狸、坊ちゃ…

背後の足音/ヘニング・マンケル

背後の足音 (上・下) ヘニング・マンケル 柳沢 由実子 (訳) (創元推理文庫) スウェーデンの警察小説、刑事ヴァーランダーシリーズの第7弾「背後の足音」のご紹介。(第6作の「五番目の女」を順番を間違えて飛ばしてしまった。) 今回は、シリーズきっての凶…

美雪晴れ―みをつくし料理帖/高田郁

美雪晴れ―みをつくし料理帖 高田 郁 (角川時代小説文庫) 2009年から刊行された「みをつくし料理帖」シリーズの第9弾は「美雪晴れ」。 2月に発売されすぐに読むことを控えて、4月以降の定年後の楽しみに取っておいたらに、読了は10月になってしまった。 この…

黒い氷/オーサ・ラーソン

黒い氷 オーサ・ラーソン 松下祥子 (訳) ハヤカワ・ミステリ文庫 スウェーデンのミステリ小説「黒い氷」のご紹介。 1966年生まれのスウェーデンの元弁護士の女性作家オーサ・ラーソンの、「オーロラの向こう側」「赤い夏の日」に続く第3弾がこの「黒い氷」。…

コフィン・ダンサー/ジェフリー・ディーヴァー

コフィン・ダンサー〈上・下〉 ジェフリー・ディーヴァー 池田 真紀子 (訳) (文春文庫) 【あらすじ】 FBIの重要証人が殺された。四肢麻痺の科学捜査専門家リンカーン・ライムは、「棺の前で踊る男(コフィン・ダンサー)」と呼ばれる殺し屋の逮捕に協力を要請…

百番目の男/ジャック・カーリイ

百番目の男 ジャック・カーリイ 三角 和代 (翻訳) (文春文庫) あらすじ 連続放火殺人を解決、異常犯罪担当部署に配属された刑事カーソンには秘密があった。誰にも触れられたくない暗い秘密だ。だが連続斬首殺人が発生、事件解決のため、カーソンは過去と向き…

銀二貫/高田郁

銀二貫 高田 郁 (幻冬舎時代小説文庫) 今回ご紹介の1冊は、「みをつくし料理帖」シリーズでおなじみの高田郁(かおる)の時代小説「銀二貫」。 4月から本書が原作のNHK木曜時代劇ドラマで、「銀二貫」が始まったので、ドラマはとりあえず録画をしておいて、…

赤い夏の日/オーサ・ラーソン

赤い夏の日 オーサ・ラーソン 松下祥子 (訳) (ハヤカワ・ミステリ文庫) 内容紹介 【スウェーデン推理作家アカデミー最優秀長篇賞受賞】 悲惨な事件に巻込まれ、心に傷を負ったままのレベッカは、職務に復帰した法律事務所で空虚な日々を送っていた。そんな彼…

掏摸/中村文則

掏摸(スリ) 中村 文則 (河出文庫) 読書メーターで私と相性のいい読者が読んでいたのが「掏摸(スリ)」。 著者は中村文則。知らない作家。読了後、ネット検索して著者自信を見て、かつて週刊ブックレビューに出演していた作家だと思い出す。 一度スリを地下鉄…

ボーン・コレクター/ジェフリー・ディーヴァー

ボーン・コレクター〈上・下〉 ジェフリー・ディーヴァー 池田 真紀子 (訳) (文春文庫) ジェットコースター・サスペンスの王道を往く傑作とのふれこみで登場した、リンカーン・ライムシリーズの第一弾「ボーン・コレクター」。私はすでにこのシリーズの「ウ…

犯罪/フェルディナント・フォン・シーラッハ

犯罪 フェルディナント・フォン・シーラッハ 酒寄 進一 (翻訳) 東京創元社 【内容紹介】 弁護士の「私」が遭遇した11の異様な“犯罪”。実際に起こった事件を元に、胸を打つ悲喜劇を描いた圧巻の連作犯罪文学。数々の文学賞を獲得しベストセラーとなった傑作…

快走/岡本かの子

今朝起きて外を見ると、あたり一面うっすらと雪景色。センター試験と雪はつきものである。 というわけで、1年ぶりにセンター試験の現代国語に挑戦してみた。 結果は100点の配点で61点。去年が60点だったので進歩なし。でも、今年の方が平均点はかなり高いと…

空飛ぶタイヤ/池井戸潤

空飛ぶタイヤ(上/下) 池井戸 潤 (講談社文庫) 大型トラックから外れて暴走したタイヤが母子に衝突し、母親は死亡するという傷ましい事故からこの物語は始まる。 赤松運送という中小の運送会社のトラックが起こしたこの事故は、運送会社の整備不良だというこ…

ソウル・コレクター/ジェフリー・ディーヴァー

ソウル・コレクター 〈上・下〉 ジェフリー・ディーヴァー 池田 真紀子 (訳) (文春文庫) リンカーン・ライムのいとこアーサーが殺人容疑で逮捕された。アーサーは一貫して無実を主張するも、犯行現場や自宅から多数の証拠がみつかり有罪は確定的にみえた。だ…

冬のフロスト/R・D・ウィングフィールド

冬のフロスト <上・下> R・D・ウィングフィールド 芹澤 恵 (訳) (創元推理文庫) 寒風が肌を刺す1月、デントン署管内はさながら犯罪見本市と化していた。幼い少女が行方不明になり、売春婦が次々に殺され、ショットガン強盗にフーリガンの一団、“怪盗枕カヴァ…

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら 岩崎夏海 ダイヤモンド社 思い出したように「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(以下「もしドラ」)をネットで注文した。リビングに少…

タンゴステップ/ヘニング・マンケル

タンゴステップ〈上/下〉 ヘニング・マンケル 柳沢 由実子 (訳) (創元推理文庫) マイブログの「読書/ミステリー」書庫は、ここのところジェフリー・ディーヴァーとヘニング・マンケルのミステリーを交互に紹介している感がある。で、今回は、マンケルの小説…

残月―みをつくし料理帖/高田郁

残月―みをつくし料理帖 高田郁 (ハルキ文庫) 吉原の大火、「つる家」の助っ人料理人・又次の死。辛く悲しかった時は過ぎ、澪と「つる家」の面々は新たな日々を迎えていた。そんなある日、吉原の大火の折、又次に命を助けられた摂津屋が「つる家」を訪れた。…

追撃の森/ジェフリー・ディーヴァー

追撃の森 ジェフリー・ディーヴァー 土屋 晃 (翻訳) (文春文庫) 物語の舞台は、アメリカはウィスコンシン州(シカゴがあるイリノイ州の北側の州)。人里離れた湖畔の森の中に建つ別荘から911通報(日本だと110番+119番通報)があり通話は途中で終わってしま…

目くらましの道/ヘニング・マンケル

目くらましの道 (上・下) ヘニング・マンケル 柳沢由実子 (訳) (創元推理文庫) 《夏の休暇を楽しみに待つヴァランダー警部。そんな平和な夏の始まりは、一本の電話でくつがえされた。呼ばれて行った先の菜の花畑で、少女が焼身自殺。目の前で少女が燃える…

スリーピング・ドール/ジェフリー・ディーヴァー

スリーピング・ドール〈上・下〉 ジェフリー ディーヴァー 池田 真紀子 (翻訳) (文春文庫) 他人をコントロールする天才、ダニエル・ペル。カルト集団を率いて一家を惨殺、終身刑を宣告されたその男が、大胆かつ緻密な計画で脱獄に成功した。彼を追うのは、い…

るり姉/椰月美智子

るり姉 椰月 美智子 (双葉文庫) 5月19日の朝日新聞の書評欄の「売れている本」で、椰月美智子の「るり姉」を知ってさっそく購読。 主人公のけい子は、長女さつき、次女みやこ、そして三女がみのりという、3姉妹の母親である。 夫とは離婚していて、けい子…

笑う男/ヘニング・マンケル

笑う男 ヘニング・マンケル 柳沢 由美子(訳) (創元推理文庫) お行儀の良い私は、"クルト・ヴァランダー"シリーズを第1作目からこつこつと読んできて、「笑う男」は数えて第四作目にあたる。 もう今度こそ刑事を辞めようと思っていた精神的に落ち込んでいた…

解錠師/スティーヴ・ハミルトン

解錠師 スティーヴ・ハミルトン 越前敏弥 (訳) (ハヤカワ・ミステリ文庫) 主人公マイクルは、間もなく刑期を終えようとしている受刑者。もう刑務所に入って10年が経とうとしていた。 8歳の時の大きな衝撃でまったく口がきけなくなったマイクルは、絵を描くこ…

万能鑑定士Qの推理劇Ⅱ/松岡圭祐

万能鑑定士Qの推理劇供 松岡 圭祐 (角川文庫) 東京ディズニーランドが開園してちょうど30年だという。 あっという間の30年、あと30年生きたいけど無理かな、大きな地震に遭う前に逝っている方がいいかな。 ディズニーのアニメ作品で最も好きなのが「不思議の…

万能鑑定士Qの推理劇(1)/松岡圭祐

万能鑑定士Qの推理劇(1) 松岡圭祐 (角川文庫) 朝日新聞の日曜日の書評「売れてる本」コーナーで、批評家佐々木敦が取り上げたのが、 角川文庫「万能鑑定士Qの推理劇」。 主人公は、高校卒業後すぐに沖縄から東京に出てきた女の子、凜田莉子(りんだりこ)。…