遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

美雪晴れ―みをつくし料理帖/高田郁

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美雪晴れ―みをつくし料理帖   高田 郁    (角川時代小説文庫)

2009年から刊行された「みをつくし料理帖」シリーズの第9弾は「美雪晴れ」。
2月に発売されすぐに読むことを控えて、4月以降の定年後の楽しみに取っておいたらに、読了は10月になってしまった。

このシリーズは、すでに(2014年8月)第10弾が発売され、シリーズは完結した。もう最後まで読み終えたパートナーとエンディングやシリーズ全般の話をしたいのだが、私はあと1冊を残している。

主人公の料理人澪(みお)は、紆余曲折あって、大坂から吉原に身売りされた幼なじみを救い出そうと、大火から復興中の吉原で商いを始める。「鼈甲珠(べっこうだま)」という自作の玉子料理を1個200文で売りに出す。数がこなせない手の込んだ料理なので1日限定20個を、吉原に押し寄せる花見客を当て込んで商いを始める。

たまご1個を使った料理に200文というのは、訳あって随分と高い値段設定(吉原バージョンの設定)となっている。200文の「鼈甲珠」20個を売れば4000文、つまり1日1両の売り上げとなる。澪は、自分で決めた値段設定なのに、200文と聞いて食べるのをあきらめて通り過ぎて行く客が大多数を占めることに心を痛める。
自分は何のために誰のために料理人となったのか、高額な高級料理をセレブに食べてもらうために料理人になったのかしらと、自問自答する。

幸いにも曲がりなりにも、澪の周辺は落ち着きを取り戻してきて、澪の自問自答の後の身の処し方は、ソフトランディングの様相を見せている。そんな雰囲気は読み取れるが、シリーズの少なくない登場人物個々の具体的な着地結果はよく分からない。だからこそ、第十弾のシリーズ最終回が楽しみである。

私たちは、5年の歳月を使ってこのシリーズ10冊(私はまだ9冊)を読んできた。今なら、全巻そろっていて一気に読める。それはそれで、うらやましい。でも、5年を要して少しずつ読み進んできた来し方も懐かしくて楽しいものであった。

繰り返しになるが、この作品が、みをつくしシリーズ全10作のラス前となる。ラスト作を早く読んで私も幸せにならなくては…。つづけさまに次回作を読むことにする。