遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

#小説

春の庭 /柴崎 友香

春の庭 柴崎 友香 (文春文庫) 柴崎友香(ともか)の芥川賞受賞作(第151回/2014年上期)「春の庭」のご紹介。 作品より先に作家の方を知っていて、オードリーの若林が司会をしていた作家ばかりが登場する楽しいトーク番組「ご本、出しときますね?」で、柴崎…

特捜部Q-カルテ番号64/ユッシ・A・オールスン

特捜部Q―カルテ番号64―(上・下) ハヤカワ・ミステリ文庫 ユッシ エーズラ・オールスン (著) ‎ 吉田 薫 (翻訳) 今回のブックレビューは、デンマークの警察小説「特捜部Q」シリーズの第4作「カルテ番号64」。 デンマークのスプロー島に実在した「女子収容所」に…

コリーニ事件/フェルディナント・フォン・シーラッハ

コリーニ事件 フェルディナント・フォン・シーラッハ 酒寄 進一 (翻訳) 東京創元社 ドイツの弁護士にして作家のフェルディナント・フォン・シーラッハの初の長編小説のご紹介。かつて拙ブログで「犯罪」というシーラッハが弁護士活動の中で遭遇した実話をも…

その犬の歩むところ/ボストン・テラン

その犬の歩むところ ボストン テラン (著) 田口 俊樹 (翻訳) 文春文庫 今現在、アメリカの西海岸カリフォルニアでは大変な山火事が続いていて、東京23区よりも広い面積を延焼し続け、死者は23人に達しているという。 夏には、東南部海岸フロリダでは、メキシ…

イシグロ・志位・前川・安倍/僕らは同学年

上記画像のお方は、今年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ。村上春樹は受賞を逃したが、イシグロの受賞は実に喜ばしい。おめでとう。 ということで、次の4人は偶然に同学年だった。 ■カズオ・イシグロ(Kazuo Ishiguro OBE, 石黒 一雄、1954年11月…

劇場/又吉 直樹

劇場 又吉直樹 (著) 新潮社 芸人で芥川賞作家又吉直樹の第2作目「劇場」のご紹介。 主人公の永田は、大阪の出身で東京の自ら主宰する劇団の座付き作家。永田の一人称で語られる下北沢界隈を舞台にした、彼が街で出会った沙希(さき)という若い女性との恋愛…

イノセント・デイズ/早見和真

イノセント・デイズ 早見 和真 (著) (新潮文庫) イノセント【innocent】1 無実の。潔白な。2 純潔な。また、無邪気な。 まあバカにするわけではないけど、何の苦労もなく育ってきてゆとり教育を受けて脳天気なテレビドラマしか見たことのないような人たちに…

堆塵館 (たいじんかん)/エドワード・ケアリー

堆塵館 (アイアマンガー三部作1) エドワード・ケアリー (著), 古屋 美登里 (翻訳) 東京創元社 何かの書評で見た「穢れの町 (アイアマンガー三部作2)」が面白そうだったので、同じシリーズの第一弾から読むことにした。 それが本書「堆塵館(たいじんかん)」…

乳と卵(ちちとらん)/川上未映子

乳と卵 川上 未映子 (文春文庫) 川上未映子のエッセイや雑文や最新刊の村上春樹との対談本は読んだことがあったが、小説を読むのは初体験。彼女が出演したテレビも何度か見ているので、声も顔も姿も話し方も好きだが、小説も好きになった。 ウィキペディアに…

流(りゅう)/東山彰良

流 東山 彰良 (著) (講談社文庫) 又吉直樹と羽田圭介が芥川賞を受賞した時(2015年上半期)、直木賞を同時受賞したのが東山彰良で、その受賞作が「流(りゅう)」。2017年7月に文庫化されさっそく読んでみた。 まじめな高校生の主人公が大学に進学して、そこ…

夜の谷を行く/桐野夏生

夜の谷を行く 桐野 夏生 (著) 文芸春秋社 久々に読んだ桐野夏生の小説「夜の谷を行く」のご紹介。 連合赤軍のリーダー格だった永田洋子(ひろこ)が2011年2月に獄中死し、その1か月後に東日本大震災が発生したころの物語。 主人公はかつて連合赤軍メンバーだ…

特捜部Q―知りすぎたマルコ/JA-オールスン

特捜部Q―知りすぎたマルコ (ハヤカワ・ミステリ文庫) ユッシ エーズラ・オールスン (著) 吉田 薫 (翻訳) 私がミステリーを好んで読むのは、作品により様々な個性がありそれに従ったプロット(構想)やストーリーがあるとはいえ、結局のところ「勧善懲悪」な…

原発ホワイトアウト/若杉冽

原発ホワイトアウト 若杉 冽 (著) (講談社文庫) 「原発ホワイトアウト」は、現役官僚作家が書いた現在・過去・未来の原発事故と、それに関連する電力会社、経産省、政権による原発行政の暗闇部分が明らかにされた問題小説。 本書は2013年9月にハードカバーが…

活版印刷三日月堂: 海からの手紙/ほしおさなえ

活版印刷三日月堂: 海からの手紙 ほしお さなえ (著) (ポプラ文庫) <もくじ> ちょうちょうの朗読会 あわゆきのあと 海からの手紙 我らの西部劇 朝日新聞の日曜日の書評「池上冬樹が薦める文庫この新刊!」で紹介された、ほしおさなえの「活版印刷三日月堂: …

女神のタクト/塩田武士

女神のタクト 塩田 武士 (著) 講談社 著者の塩田武士は、グリコ森永事件をベースにした小説「罪の声」を昨年夏に上梓したが、それを読みたくて図書館に予約を入れたものの「罪の声」はテーマが興味をそそり、加えて文学賞を取ったり本屋さん大賞にノミネート…

行列のできる図書館貸出し本

Amazonで古書店を出店してから(と言っても、単に持っている本を売っているだけだが)、かれこれ1年近くになる。トータルで80件の取引が成立。 品質の高さと価格の低さで収益は度外視。私の本棚で眠っていたマイブックは、日本各地で二度目の人生を送ってい…

直木賞受賞「蜜蜂と遠雷」/恩田陸

第156回の芥川賞と直木賞の受賞作が決まった。 芥川賞は、山下澄人(50才)の「しんせかい」(画像下段右)に決まった。 山下は、倉本聰が主宰する「富良野塾」の元塾生で、受賞作は富良野塾での生活をベースにした作品だという。表紙の「しんせかい」という…

特捜部Q Pからのメッセージ/オールスン

特捜部Q ―Pからのメッセージ― 〔上下〕ユッシ・エーズラ・オールスン (著) 吉田 薫 、 福原 美穂子 (翻訳) (ハヤカワ・ミステリ文庫) デンマークの警察小説でユッシ・エーズラ・オールスン作の「特捜Q―Pからのメッセージ―」のご紹介。 「―Pからのメッセージ―…

村上春樹「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」

ノーベル医学生理学賞に大隅良典教授の受賞が決まり、2016年のノーベル賞ウィークが始まりました。日本人の受賞はコンスタントになってきました。大隈教授も知る人ぞ知るお方だったのでしょう、私は存じ上げませんでしたが。先生、おめでとうございます。「…

こてんぱんな某文学賞選評/佐藤春夫

上記画像は、和歌山県新宮市の佐藤春夫記念館の和室だそうです。 私のフォローワーの盛田さん(彼は売れっ子作家です)が面白いつぶやきをしていました。 ■盛田隆二 『父よ、ロング・グッドバイ』 @product1954 いささか唐突ですが、クイズです。 佐藤春夫に…

イン・ザ・ブラッド/ジャック・カーリイ

イン・ザ・ブラッド ジャック・カーリイ 三角和代 (訳) (文春文庫) 【あらすじ】 刑事カーソンが漂流するボートから救い出した赤ん坊は、謎の勢力に狙われていた。収容先の病院には怪しい男たちによる襲撃が相次いだ。一方で続発する怪事件―銛で腹を刺された…

シスターズ・ブラザーズ/パトリック・デウィット

シスターズ・ブラザーズ パトリック・デウィット 茂木 健 (訳) 創元推理文庫 直木賞作家の東山彰良のおすすめ小説「シスターズ・ブラザーズ」をようやく読了。 フォーティナイナーズ(49ers)は、サンフランシスコのアメリカンフットボールチーム名としてつ…

千年の折り/イーユン・リー

千年の折り イーユン・リー著 新潮社 このほど、「独りでいるより優しくて」を上梓した米国の中国系作家イーユン・リーのインタビュー記事が、7日の朝日新聞に掲載された。 http://digital.asahi.com/articles/DA3S12298481.html 8年前にわがブログで彼女の…

Amazonで古本を初めて出品しました

家人は最近あまり翻訳小説を読まなくなったので、Amazonのマーケットプレイスにでも出品してみようと、手持ちの古本を20冊ほど出品しました。 以前は、私が読み→妻が読み→社内メールで職場の先輩に貸してあげていました。その先輩は、いつも私から借りる本は…

黒猫・黄金虫/エドガー・アラン・ポー

黒猫・黄金虫 エドガー・アラン・ポー 刈田元司訳 旺文社文庫 BS-TBSの「林修・世界の名著」という番組で、又吉尚樹と芥川賞を同時受賞した羽田圭介が、エドガー・アラン・ポー(1809 - 1849)の「盗まれた手紙」を名著に挙げていた。この番組はゲストが選ん…

ゼロの焦点/松本清張

ゼロの焦点 松本清張 (新潮文庫) NHKBSで、「シリーズ・Jミステリーはここから始まった! 第1回「ただの“社会派”じゃない!~松本清張“ゼロの焦点”」を視聴。出演が笠井潔、小森陽一、橋本麻里、中村文則、華恵。読書についてはプロというべき5人が、松本…

お薦めミステリ/東山彰良×池上冬樹

読書週間が始まった日(2015年10月27日)の朝日新聞の特集が、「さぁ、言葉の迷宮へ 東山彰良さん×池上冬樹さん対談 秋の読書特集」だった。 東山彰良は、先の直木賞を審査委員の満場一致の大絶賛で獲得したばかり。彼の受賞作「流」は、文庫本なってから読…

特捜部Q“キジ殺し”/ユッシ・オールスン

特捜部Q ―キジ殺し― ユッシ・エーズラ・オールスン 吉田薫・福原美穂子 (訳) (ハヤカワ・ミステリ文庫) デンマークの警察小説「特捜部Q」シリーズの第2弾、「キジ殺し」を読了。 はみ出し刑事のカール、中東からやってきた助手アサドに加えて、ローセとい…

火花/又吉直樹

「火花」が芥川候補賞になったので、単行本は買わずに受賞した後に月刊「文藝春秋(芥川賞作品掲載号)」をAmazonで予約して手に入れた。 選考委員の選評がことのほか興味があり、受賞作はきちんと読まなかったりする方が多い。1976年、中上健次が「岬」で受…

その女アレックス/ピエール・ルメートル

その女アレックス ピエール・ルメートル 橘明美 (訳) (文春文庫) ミステリー愛好家界隈では、話題の1冊だった「その女アレックス」を読了。 ミステリーとしては珍しいフランス製の小説で、怪盗ルパンシリーズのモーリス・ルブランを読んだことのない私には、…