遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

コフィン・ダンサー/ジェフリー・ディーヴァー

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コフィン・ダンサー〈上・下〉
     ジェフリー・ディーヴァー  池田 真紀子 (訳) (文春文庫)

【あらすじ】
FBIの重要証人が殺された。四肢麻痺の科学捜査専門家リンカーン・ライムは、「棺の前で踊る男(コフィン・ダンサー)」と呼ばれる殺し屋の逮捕に協力を要請される。殺し屋「コフィン・ダンサー」は執拗に証人の命を狙う。科学捜査専門家リンカーン・ライムは罠を張って待ち構えるが、ダンサーは思いもよらぬところから現れる。その素顔とは。そして四肢麻痺のライムと、その手足となって働くアメリア・サックス巡査の間には愛情が育っていくが…。サックスにダンサーの魔手が迫る。


リンカーン・ライムのチームが、殺し屋コンフィン・ダンサーから保護する重要証人の中に、ある女性パイロットがいる。
彼女は、「背が低くて不細工」な女性だと表現されている。同時に、実に魅力的な女性に設定されていて、元モデルでアメリア・サックス巡査は、リンカーンが彼女に惹かれていることを嫉妬する。
外見はほぼ完璧な女性が、外見ではなく「できる女」として生きている女性に嫉妬するといった、細かい描写が面白くて、なかなか奥深い作品に仕上がっている。

この作品は3人称で書かれているので、リンカーン、部下のサックス、重要証人たち、殺し屋コフィン・ダンサーのそれぞれがいる場所や彼らの行動や思考が読者は俯瞰的客観的に掌握できる。関連したそれぞれのシーンがよく書き込まれていて、連続するカットで構成されている映画のように楽しめる。

また、ある理由があって重要証人である女性パイロットが小型飛行機を離陸させ着陸する一部始終が描かれているシーンが登場するのだが、ページ上の文字を追うだけで、映画以上の迫力とスリルを味わえ、実に愉しい。そんなシーンがふんだんに用意されていて、サービス精神満点の作品に仕上がっている。

さらに、相変わらずジェフリー・ディーヴァーは、どんでん返しを用意してくれている。どんな「どんでん返し」なのか、詳しいことは書かないマナーを守ると欲求不満に陥る。そのせいで後で記事を読み返しても詳細が思い出せないし、その面白さも伝わらないのがもどかしい。
しかし、なにはともあれ、リンカーン・ライムシリーズの第2作品目にしてそこまでやるか感が、なんとも愉しい。

この次は、ヨーロッパの落ち着いたミステリを読むことにする。