遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

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思い出したように「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(以下「もしドラ」)をネットで注文した。リビングに少しの間放置していたら先に女房が読み終わっていて、私も続いて読了。
 
もしドラ」は、程久保高校の野球部の女子マネージャー川島みなみが、ドラッカーの「マネジメント」を手引きとして、「野球部を甲子園に連れて行く」という目標をたててそれを実現しようとする物語。
本書には、チームの管理手法の手引きとなったドラッカーの「マネジメント[エッセンシャル版] 」(上田惇生:訳)の文章が、さまざまな場面で短く引用されている。引用元の「マネジメント」の頁数まで紹介されている。
 
私のような想像力のない人間は、「マネジメント」を読んだだけではなかなか実践に直結しないのだろう。しかし「もしドラ」では、川島みなみが監督や主将や他のマネージャーと力を合わせて、程高野球部を目標達成へ導くために、「マネジメント」のあるフレーズを具体的にどのように実践するのかが明らかになっている。それが「もしドラ」の魅力のひとつだと思う。
 
程高野球部を、町工場に置き換えても、企業のある部門に置き換えても成立するのだろうけれど、高校野球部と甲子園というイメージしやすい組織や目標を設定したのも正解だったと思う。
本書を読んで、3か月で甲子園に連れて行こうと本気で思う野球部マネージャーはあまりいないだろうが、1~2回戦突破を目標とする野球部が本書を参考にしたら、それはそれでとてもいいチーム作りを可能にするだろう。
 
私はドラッカーを読んだことはないが、自分なりに考えて実践してきたことが、「マネジメント」に書かれてあることに近かったりそのままだと思うこともあり、「もしドラ」を読んで今さらながら気づかされたことだった。
 
本書「もしドラ」の最も重要なキーワードは、ドラッカーの「マネジメント」から引用された「真摯(しんし)」であろう。
下のような引用文に感動したことを告白する。「真摯」なマネージャーなら、この短い名文から膨らませて自分なりのマネジメントを確立できると思う。
 
P.F.ドラッカー 「マネジメント」より
"うまくいっている組織には、必ず一人は、手をとって助けもせず、人づきあいもよくないボスがいる。この種のボスは、とっつきにくく気難しく、わがままなくせに、しばしば誰よりも多くの人を育てる。好かれている者よりも尊敬を集める。一流の仕事を要求し、自らにも要求する。基準を高く定め、それを守ることを期待する。何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない。真摯さよりも知的な能力を評価したりはしない。このような素質を欠く者は、いかに愛想がよく、助けになり、人づきがいがよかろうと、またいかに有能であって聡明であろうと危険である。そのような者は、マネジャーとしても、紳士としても失格である。"
 
 "真摯さを絶対視して、初めてまともな組織といえる。それはまず、人事に関する決定において象徴的に表れる。真摯さは、とってつけるわけにはいかない。すでに身につけていなければならない。ごまかしがきかない。ともに働く者、特に部下に対しては、真摯であるかどうかは二、三週間でわかる。無知や無能、態度の悪さや頼りなさには、寛大たりうる。だが、真摯さの欠如は許さない。決して許さない。彼らはそのような者をマネジャーに選ぶことを許さない。"