遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

特捜部Q―知りすぎたマルコ/JA-オールスン

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特捜部Q―知りすぎたマルコ        (ハヤカワ・ミステリ文庫) 
    ユッシ エーズラ・オールスン (著) 吉田 薫 (翻訳)

私がミステリーを好んで読むのは、作品により様々な個性がありそれに従ったプロット(構想)やストーリーがあるとはいえ、結局のところ「勧善懲悪」なところに帰結するからだろうと思う。

主人公たちの恋はあまり成就しないが、悪は滅び正義は勝つ。つまり、現実逃避できるのが愉しいのだろう。

「特捜部Q」シリーズの第5弾「知りすぎたマルコ」のご紹介。(不覚にも第4弾を飛ばしてしまった。)

欧州一円を仕事場とするロマ(かつてはジプシーと呼ばれた流浪の民)の犯罪集団の一少年がマルコ。

タイトルの通り何かを「知りすぎたマルコ」が今回の中心人物で、政府高官や大銀行幹部に、なぜか追われることになる。この「何かを知りすぎてなぜか追われる主人公」というのは、いつものとおり上巻で明らかになる。

政府高官や大銀行幹部というのが巨悪であり、貧しくてたくましい恵まれない少年マルコに読み手の思い入れは集中するはずで、これまた今のクソ社会から現実離れしている。

例によってコペンハーゲン警察特捜部Qは、警部補カールと男女の助手アサドとローセの3人での捜査体制。主人公カールは英国ミステリーのように不埒なキャラクターになってきていて微笑ましいし、その代わり、中東からやってきたアサドとパンクファッションのローセが実力をつけてきて香しい。

相変わらずだが、読み手にワザを掛ける手順とその手際の良さに作者オールスンの手練手管を実感する。ワザに掛かって夢を見る、愉しい特捜部Qシリーズは健在である。

すっ飛ばしてしまった第4弾「カルテ番号64」は、夏休みの宿題に取っておくことにする。