本書は2013年9月にハードカバーが出版され(2015年に文庫化)、そこそこのベストセラーになっていたようだが、私は先日、この小説の主人公のモデルを国会で証人喚問すべきだという動きの中で、その存在を知ったばかりだった。
本書のモデルは、新潟県の柏崎刈羽原発、元新潟県泉田知事、経産省の官僚など実在する原発や人物である。また、実名で登場する元官僚もいるし、河野太郎や山本太郎と思しき政治家も登場する。さらに、総理や首相官邸や与野党なども、現実に近い仕立てになっている。
「日本を牛耳っているのは俺だ」という独白する、本書の主人公日村(経産省の官僚)は、大本営の作戦参謀のようなろくでなしの穀つぶしで、勉強不足で無能で強欲な政治家がこの男に利用されていく過程は、血圧が上がることを覚悟されたい。
しかし、その部分が今の日本を表象していることは、疑いのないことだと思う。
本書は「原子力ムラ」の住人でなければ書けない内容で終始している小説仕立てのドキュメンタリーである。プロローグとエピローグは、フィクションなのだが、それが実にリアルな暗黒のストーリーで、起きてはならない日本の未来がそこに見えることが恐ろしい。
どこかの国からミサイルが飛んでくるといった話がおとぎ話に感じられるほど、本書はリアルに恐ろしい。私たちは、フクシマから何も学んでいないのか、あるいはもう忘れてしまったのだろうか。
目の前はまさに「ホワイトアウト(真っ白!で何も見えない)」状態である。
【覆面作家若杉冽の言葉】
本来、私たち霞が関の官僚は税金で養われている訳で、僕らがやっている事、情報っていうのは、本当は国民のみなさんにきちんとお返しして、それで、本当にそれでいいということになれば、その方向に進めることになるのに、実際には実現していないのでささやかな抵抗になりますけれども、「本当はこうなんだよ」という事をお伝えしたい。