遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

これからの日本,これからの教育/前川喜平, 寺脇研

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これからの日本、これからの教育     前川喜平, 寺脇研 (著) ちくま新書      


加計問題で時の人となった前文科省事務次官前川喜平と、ワイドショーなどでもおなじみの「ミスター文部省」と言われた寺脇研が、この国の行政から教育までを対談形式で語った「これからの日本、これからの教育」のご紹介。

加計学園のことは、思いのほかボリュームが少なくて、元文部官僚による日本と教育の現状と未来について多くのページが割かれている。

寺脇が1952年生まれ、前川が1955年生まれで、ともに東大法学部を出てほぼ同時代に文部省に在籍し、多くの法案や教育現場にかかわってキャリアを積んできた二人だから、二人にものの数時間も与えればこれくらいのことは語るだろうと思わせる。それほどこの二人は「ミスターキャリア」だ。

生涯教育やゆとり教育、高等教育や朝鮮人学校の授業料の無償化、LGBTと教育、教科書採択事情や地方と都会の教育格差の現状などなど、一般人が聞いたこともない興味ある話と二人の考え方が満載。ほぼ全面的に、私は同調できた。

政治と行政は表裏一体なので、当然に政治家は実名で登場してきて、現代に近づくほど当然に政治家はショボいところが、何とも不幸な国日本である。

著者二人は人間が好きで、文部官僚にふさわしい問題意識の持ち主であり、今の教育や行政を改革できる即戦力でもあり、「これからの日本、これからの教育」の推進力としてまだまだ発酵中の現役であることがうかがえる。

本書は妻が先に「面白い」と読み進めて、読了後すぐ私に回ってきた。普通の中学生が読めば為になる良い人生読本になると思われるが、もう少しやわらかい表現で編集しても良かったかもしれない。

いずれにせよ、著者二人以外の60代の「有能」な元官僚たちは、天下り先で塩漬けになったり腐っているのだろうか、なんとももったいないことである。