成瀬は信じた道をいく 宮島未奈 新潮社
「成瀬は天下を取りに行く」に続く宮島未奈による成瀬シリーズの第2弾「成瀬は信じた道をいく」を楽しく読みました。
「新たな語り部」である成瀬の近所に住む小学生や成瀬の父親など、新しい登場人物たちが成瀬あかりを一人称で語る、全5編の成瀬物語です。
さすがに一作目ほどのフレッシュさはないものの、高校生から大学生になる時期の成瀬と同じ時間を過ごせば、琵琶湖の湖面を吹く涼しい風を感じられて爽快です。
成瀬の喋り言葉が引き続き断定調で小気味が良くて、彼女の行動にも陰りがなくてサバサバ・パキパキしていて、日本の政治家にもこの口調や行動力を参考にしてくれたら、いろいろわかりやすくて清潔なのになあと感じてしまいました。
読後、なぜか思い出したように第4回の本屋大賞を受賞した佐藤多佳子の名作「一瞬の風になれ」と同じ爽快感を感じました。
私はレジャーで何度か、仕事で数十回も大津の成瀬が住む「におの浜」に足を運んだ過去がありますが、本書を読んで私の個人的なノスタルジーにカイツブリのように胸まで浸かることができました。
「鳰(にお)の浜」の鳰とはカイツブリのことで、いにしえの近江には多くの野鳥たちが、成瀬の如く自由を満喫しながら生息していたのかもしれません。
子どもたちとの夏休みを、海に行くことをサボった私は、丹下健三が設計したにおの浜ホテルの2人部屋を4人で過ごしました。ホテルの巨大なプールに浸かっているだけのなんちゃって海水浴は2年ほど続けましたが、それは何とも至福の時でありました。
ということで、ミステリアスな展開となった最終編は「なるほどそう来ますかw」となるのですが、大学生に成長した成瀬がどうなるのか、お楽しみはこれからであります。