遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

一穂ミチの「光のとこにいてね」を読みました

光のとこにいてね   一穂ミチ   文藝春秋 

一穂ミチの「光のとこにいてね」を読みました。著者の作品を読むのはこれで3冊目で、いま本が売れる作家の仲間入りを果たしていると思しき著者ならではの面白い力作でした。

7歳で偶然出会った同い年の女性、結珠(ゆず)と果遠(かのん)。2人の交流期間は短くて、出会ってつかの間でお別れの時が来ます。

時を超え友情を超えて惹かれあう2人が、その後の人生の節目で偶然に出会うことになりますが、全3部作の構成で、出会いのたびに2人それぞれが交互に一人称で物語を綴る形式になっています。

一人称では他人の心の動きは想像で語られますが、間髪を入れずに結珠と果遠が交互に語ることで、互いの心のうちが即座に読み手に伝わってきます。そのため、快適な空間演出が施されることになり、ページを繰るのが愉しいことになります。

小説で他人の人生の幸不幸に出会い、それを自由な立ち位置で無責任に愉しめる、といういつもの体験でしたが、良き読書体験でした。本作に悪党は登場しませんが、朝ドラ向きではないので本書を読んでこの素晴らしいドラマを楽しんでいただきたいと思います。

わが町の図書館では本書には長蛇の待ち列ができていて、いまから図書館に予約すれば、来年の春休みくらい(?)にはやって来てくれそうです。

ほとんどストーリーは書かずにブックレビューしましたが、魅力的な主人公2人が、読後しばらく心の中にいてくれるかもしれません。

 

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