遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

フォリー・ベルジェールのバー/マネ

イメージ 1

作者:エドゥアール・マネ(1832 - 1883年) 
制作:1882年 寸法:92 × 130 cm 
所蔵 コートールド・ギャラリー(ロンドン)

女性が描かれた絵画で、とても好きな1枚が、エドゥアール・マネ作の「フォリー・ベルジェールのバー」だ。

はじめてこの絵を見たのは、無垢な少年期だったと思う。「綺麗なおねえさん」だと思った。だから、私にとっては、揺らぐことのない、初恋の女性肖像画である。

マネは、鏡に映っている店内のはっきりしない様子とは対照的に、女性とカウンターの小物たちにフォーカスを合わせ、それぞれの表情を浮かび上がらせている。手前と奥の対照的な描写が見事だ。

女性の全体の印象と、はにかんだような微笑をたたえた顔の表情が良い。作品そのものは非対称な構図だが、中央の女性はシンメトリーに描かれていて、安定感がある。

マネは、この店に通ってこの絵を描いたのだろうか。スケッチをもとにアトリエで、彼女を思い出しながら描いたのだろうか。「美の巨人たち」のバックナンバーによると、すでに梅毒で歩けなくなっていたマネは、彼女を呼び寄せてアトリエでこの絵を仕上げたのだそうだ。

そして、この代表作を最後の作品として遺し、翌年、51年の短い生涯を閉じている。