遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

睡蓮/クロード・モネ

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睡蓮
作者 クロード・モネ   製作年 1903年
寸法 73 cm × 92 cm 所蔵 マルモッタン美術館、パリ

京都市美術館で開催中の『モネ展 ―「印象、日の出」から「睡蓮」まで―』から、「睡蓮」をご紹介。

1883年、モネはパリから数十キロほどセーヌ川を下ったジヴェルニーに移り住みます。この時モネは42歳。そして86歳で亡くなるまで、このセーヌ川とエプト川の合流する自然豊かな村を拠点に制作を続けます。自邸からほど近いエプト川へたびたび制作に出かけ、舟遊びや釣りをする女性たちの穏やかな情景を描きました。

そして、モネは自宅の前の土地を購入し池を配した大きな庭園を造りました。周りには柳が生い茂り、睡蓮が点在する大きな池のある庭です。浮世絵好きが高じて、日本風の太鼓橋までかかっている大きな池です。

ご存じのとおり、モネが描いた睡蓮は自邸の池に浮かぶ睡蓮でした。紹介のこの「睡蓮」は、今回のモネ展で展示された「睡蓮」のなかでは、もっともオーソドックスな作品です(他の作品は、晩年のかなりシュールなものでした)が、しいて言えば、睡蓮より水面に映える池ノ端の柳や澄んだ青空の方に重きを置かれた作品だと言えましょう。

よく手入れが行き届いたモネの庭の池は、水中の水草が透き通って見えたり、水面が水鏡のようになって周辺の樹木や青空が映ります。この作品は、青空がよく書き込まれているのに、睡蓮はラフなタッチで描かれていて対照的です。しかし、当然のことながら、水面に浮かぶ睡蓮と水鏡に映る青空や柳の木は、干渉しあわない存在感があり見事なものです。また、美しい池を保つための庭師の苦労の痕跡が見て取れて、深読みのできる作品でもあります。

いずれにせよ、この睡蓮の圧倒的な清々しさに心が洗われたしだいであります。