日本美術応援団 赤瀬川 原平,山下 祐二 ちくま文庫
昨年10月に亡くなられた赤瀬川原平さんの死を(いまごろ)悼み、彼と山下祐二の共著「日本美術応援団」を再度ご紹介。10年ほど前、ネットで偶然発掘したこの書物。私はこれで、日本美術をさらに深く愛するようになった。絵描きと学者の、日本美術のよもやま話的鑑賞対談集である。
水墨画で、日本美術に目覚めたお二人が、最初は、画集を観ながらはじめた対談が、「やはり現物を見て、その感動がさめないうちに語り合う」という、実況形式の対談集に発展し、それを一冊にまとめたものである。
目次
焼きたてクッキーとの対話縄文、恐るべし―縄文土器
テツガクしない石庭の見方―龍安寺の石庭
ロマンを吹き飛ばす「乱暴力」―青木繁
「死体」が主人公のインスタレーション―装飾古墳
「素朴」や「異端」じゃくくれない―円空・木喰
生半可じゃない真面目さ―円山応挙
ナマ乾きの油絵―高橋由一
裕福な志願兵、パリに殉死―佐伯祐三
手擦れニコン的 根来の美―根来塗
よくあるのだが、この本を電車で読んでいて、私は降りる駅を乗り越しそうになった。
日本の美術は、ワールド・ワイドで素晴らしいことは、世界の巨匠が、浮世絵などに影響を受けたことから証明できるが、私のような素人にも、著者の二人が分かりやすく語ってくれる。赤瀬川は表現者の立場で、山下は研究者の立場で、現物の作品の前にひれ伏した後、「作品の力」がどこから湧いてくるのか、読み手に押しつけることなく、素直に感じた言葉で語ってくれるのである。
それが、説教くさくなく、実に面白い。軽くて、広くて、でも、決して浅くなくて、嬉しくなってくる。
作品のカラー写真は鮮明で、作家のプロフィールや専門用語の注釈が、脚注で用意されていて、いたせりつくせりの「こしらえ」になっている。当然ながら、どこに行けばそれと会えるのかもわかる。
私は、本書で紹介された日本美術の作品群の本物を、10年前は全て観たことはなかった。まるで観てきたような気にさせる本書ではあるが、この10年で、少しずつ本物に出会えた。応挙、光琳、等伯、若冲、佐伯、龍安寺などがそれにあたる。
私がまだ会えていない青木繁の「海の幸」は、久留米の石橋美術館に収蔵されているのだが、来年(2016年9月の予定)には他の美術品とともに東京のブリジストン美術館に移転されるという。久留米に行くか東京に行くか、迷うところだが本物にお目にかかってから死にたいと思う。
赤瀬川さん、いい本をありがとうございました。