娘がスタバで友達と歓談。友が中座しひとりになって、しばらく隣のテーブルの女子二人の会話が耳に入る。
「リンパ行こうよ、リンパ」と一人が誘っている。
娘は、リンパヨガのことだと思ったという。続きを聞いていると「琳派」展のことだと判明。
光悦の硯箱は、蒔絵。木造りの箱に漆を施し金を蒔いた工芸品。日本史や美術の教科書でおなじみの作品だが、私は現物に初めてお目にかかった。フォルムは実に大胆だが金の蒔き方は実に細密で、芸術家の要素が詰め込まれた作品である。書の大家にして、400年ののちまで人々を魅了する硯箱まで自分で作ってしまう。天は二物を与えないはずなのに不公平だ。
光琳の螺鈿の硯箱とは対面できなかったが、光悦を超えるには螺鈿でも施さないと仕方ないところか。光琳も絵はすごいわ蒔絵螺鈿はすごいわで、「天は二物」法則違反なのである。弟の尾形乾山の焼き物も多く展示されていて、兄弟ですごいのも反則のような気がする。
■舟橋蒔絵硯箱(ふなばしまきえすずりばこ) 国宝 木製漆塗
本阿弥光悦作(ほんあみこうえつ)
縦24.2 横22.9 高11.8 江戸時代 17世紀
蓋甲を高く盛り上げた独特の姿をみせる硯箱。箱の外側は全面を金粉を密に蒔いた金地に仕立て,鉛板の橋を斜めに渡し,『後撰和歌集』に収められた源等の歌「東路のさのの(船橋)かけてのみ思わたるを知る人そなき」を銀文字で散らす。古典文学に主題を求めたデザインと,大胆な装飾材料の用法を特色とする光悦蒔絵の代表作である。
尾形光琳作(おがたこうりん)
縦27.3 横19.7 高14.2 江戸時代 18世紀
「からころもきつつなれにしつましあればはるばるきぬるたびをしぞおもふ」の歌で有名な『伊勢物語』第九段三河国八橋の情景を描いた硯箱。ここには物語絵にありがちな説明的な要素はなく、主題の本質を鋭く追求する文様構成と装飾材料の大胆な用法が見るものの目を引く。光琳蒔絵の特質をはっきり示した彼の代表作である。
※2点とも東京国立博文館の所蔵。