遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

日本美術入門/CARTA (カルタ) 陽春号

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学研が発売した、大人のための深くて楽しい教養情報を満載した、
ビジュアル・カルチャー誌「CARTA(カルタ)」。
 
第1号は、今年編纂1300年を迎える「古事記」の総力特集だったようで、
私が何かの書評で気付いたときは既に完売で、
それより、第2号の陽春号の発売を楽しみに待っていた。
その特集テーマは、絢爛・幽玄・ダイナミック!「日本美術入門」
 
目次をそのまま紹介すると、
飛鳥時代からの聖なる造形を今に伝える「仏像と仏画
日本人ならではの時間・空間感覚を見せる「物語絵巻」
洗練を極めた技術とデザインのセンスの「屏風絵・襖絵・扇絵」
写実をはるかに超えた自己表現の極地「水墨画
あまりにも革新的な芸術館を打ち出した「茶陶」
江戸文化の爛熟が生んだ世界的ポップアート「浮世絵」
とあいなる。
 
この目次だけで、日本美術の特徴的な全容が理解できるが、
監修の矢島新が、年表や代表的作品で、雑誌らしくさらっと解説してくれる。
 
中国大陸や朝鮮半島の美術が、日本の美術の父母となるものだが、
「父母」なる地の美術は、とても普遍的で誰が見てもウン美しいというもの。
それに比べて、日本美術は「インパクト」に重きを置いた、
「分かる人に分かればいい」「好きな人に惚れられたい」的な芸術なのである。
 
古今東西誰でも理解できる美であろう。
しかし、わが国の天才たちは大変なアバンギャルドを展開する。
 
 
こんなにインパクトのある、しかも写実的な絵画は、中国やヨーロッパには存在しない。
 
また、運慶や円空や無名の仏師たちの彫刻や、各地の窯の陶工たちの作品は、
大陸や半島のものと一線を画す独自の技法と試みが同居する。

「日本の文化人にとって、造形の基本たるべきリアリズムは必ずしも重要ではなかった」
と解説されているように、狭い島国の均質な鑑賞者の教養が、
普遍的でないもの「絢爛や幽玄やダイナミズム」をすんなり受け入れられた。
そういう土台があったからこそ、自由闊達な表現者が多く誕生したようである。
 
CARTA次回号(5月発売)は「日本建築史 法隆寺からスカイツリーまで」がテーマ、
また楽しんでしまいそうである。