少年
監督:大島渚
脚本:田村孟
撮影:吉岡康弘、仙元誠三
音楽:林光
出演者
公開年 1969年
上映時間 101分
大島渚は、一生涯怒って突っ張って生きた印象がある。手がけた作品は、いつの時代にもアバンギャルドで話題性があった。しかしその映画作品より、監督の方が目立っている印象もある。そんな大島作品ではあるが、私は「戦場のメリークリスマス」を見たに過ぎなかった。
ATG(アート・シアター・ギルド)の低予算作品ながら、カラー作品である。日本各地の街頭ロケシーンが印象的で、エキストラなど一人もいないが、4人の出演者は街に溶け込んでいる。まるでドキュメンタリーのようでもある。
少年は、犯罪を繰り返し流れて行く家族の中で、息詰まるような暮らしに耐えていく。
主人公の少年役阿部哲夫は、養護施設にいた孤児だったそうだ。演技の出来る子役ではないし、可愛い顔もしていない。大島渚がどのように演出したのかは知らないが、少年は「演技」を感じさせない自然さがあり、カメラに撮られている意識もないように感じられる。
大島は、見事に少年を映画の中に存在させた。「戦メリ」で抜擢された北野武に比べれば、その個性は忘れられない強さや悲しみがある。でも、それはアバンギャルドではなく、自然な人物として存在している。小津安二郎の描く人物たちより自然である。
「少年」は、私の観た大島作品の中でナンバーワンである。2本しか見ていないが、断言できる。
悲しい昭和は遠くになりにけり。