遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

最強のふたり/エリック・トレダノ

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最強のふたり Intouchables

監督・脚本
出演者
フランソワ・クリュゼ、オマール・シー、アンヌ・ル・ニ、オドレイ・フルーロ
日本公開 2012年9月1日
上映時間 112分

あらすじ
パリに住む富豪のフィリップ(フランソワ・クリュゼ)は、頸髄損傷で首から下の感覚が無く、体を動かすこともできない。フィリップと秘書のマガリー(オドレイ・フルーロ)は、住み込みの新しい介護人を雇うため、候補者の面接をパリの邸宅でおこなっていた。
ドリス(オマール・シー)は、職探しの面接を紹介され、フィリップの邸宅へやって来る。ドリスは職に就く気はなく、給付期間が終了間際となった失業保険を引き続き貰えるようにするため、紹介された面接を受け、不合格になったことを証明する書類にサインが欲しいだけだった。
気難しいところのあるフィリップは、他の候補者を気に入らず、介護や看護の資格も経験もないドリスを、周囲の反対を押し切って雇うことにする。フィリップは、自分のことを病人としてではなく、一人の人間として扱ってくれるドリスと次第に親しくなっていく。


偶然CS放送で出会った映画「最強のふたり」のご紹介。タイトルはギャング映画みたいだが、フランスのヒューマン・ドラマである。
女房や娘はこの映画を既に見たという。映画館で二人でこっそり見たのかもしれない。ことほど左様に大ヒットしたフランス映画らしい。
監督と脚本が同じ二人の共同でなされているが、監督たちも俳優たちも知らない人たちばかりである。

アフリカ移民の子で貧しくて無職でブラブラしている若いドリスは、母親には家を出て行けと言われもう失うものはない。障がい者の介護など柄にもない職業なのだが、富豪のフィリップに見初められ採用され、素のまま接する態度にますます信頼を得ていき、フィリップと主従の関係を超えた関係を築いていく。

貧しくて無学なドリスの境遇は深刻なのだが、作品内ではじめじめしたところがない。「富豪の暮らしが何ぼのものじゃい」といった感じの素朴なドリスのフィリップとの会話が、フィリップだけでなく私たちにも小気味よく伝わって楽しい。
フィリップのお屋敷内での神妙なクラシック・コンサートが、アース・ウィンド&ファイヤーのダンス・シーンになるところも楽しい。ふたりの持つ文化の違いと、その出会いのシーンが楽しい。

繊細な日本人たちが「えっ障がい者や女性にそんな言葉投げかけて大丈夫なの?」と思うような場面がしばしば登場するが、言葉を受け取る方が大人なので、関係性は保たれる。厭味がなく相手を傷つけないユーモアが含まれた輪郭のはっきりした会話のやり取りが、フランスのエスプリなのかもしれない。私たちにもできるので、研鑚を積みましょう。

映画を通して、日仏の異文化交流もできるのである。