遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

アビエイター/マーティン・スコセッシ

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アビエイター The Aviator
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日本公開  2005年3月26日   上映時間 169分

米国の大富豪、ハワード・ヒューズ(1905 - 1976)の半生を描いたマーティン・スコセッシ監督作品のご紹介。

ハワード・ヒューズは、実業家・映画製作者・飛行家の顔を持っていたが、それが可能だったのは親からの莫大な遺産があったからである。とはいえ、しなやかな二代目の大富豪の半生が、スコセッシの映画になるわけがなく、山あり谷ありの「青年ハワードの大冒険」映画と言える。

タイトルの「アビエイター」(aviator)とは飛行家という意味である。
ヒューズは、自ら操縦桿を握り世界一周飛行の世界記録を樹立している。一方でとんでもない墜落事故も経験している。
また、第一次世界大戦の戦闘機のパイロットたちを描いた映画「地獄の天使」を、気の遠くなるような時間をかけ、莫大な資金をつぎ込んで製作し大ヒットさせもした。
さらに、航空会社のTWAを経営し、当時世界の空を独占支配しようとしていた「パンアメリカン航空」の利権と戦い、買収工作にも屈せず、パンナムの子飼いの大物政治家が開いた公聴会で勇気ある対決を繰り広げた。
これら「アビエイター」としてのエピソードが巨費をかけてスリリングに描かれていて、すこぶる面白い。

また、主人公はキャサリン・ヘプバーンエヴァ・ガードナーと浮名を流したが、彼女たちは少年のように夢を追う彼の純粋さに心を奪われたのか、大富豪という魅力だけに恋したわけではないことがうかがい知れる。
後に生涯を添い遂げたスペンサー・トレーシーとキャサリンの密会スクープ記事を高額で買い上げて、キャサリンのロマンスを邪魔させずに擁護したヒューズの純愛な対応がうるわしくてかっこいい。

潔癖症の母親に育てられたヒューズは、自分も精神的な強迫状態に陥る発作にしばしば襲われ、華やかなエピソードに隠された影の部分も周到に描かれている。主人公の華やかな部分だけなら120分作品だったのだろうが、暗い闇も描いて169分の重厚な作品になった。

画像上段、左がレオナルド・ディカプリオ。ヒューズの光と影を好演。

2番目が、キャサリンを演じたケイト・ブランシェット。まぶしいほど美しく撮られていて、時代の最先端を行く実在の映画女優の貫禄を演じるケイトの演技力は特筆すべきと言えよう。ブランシェットはこの役でアカデミー賞をはじめとする各賞の助演女優賞をほぼ独占した。私が今一番好きな女優である。


画像下段が、左からハワード・ヒューズキャサリン・ヘプバーンエヴァ・ガードナーの実像である。下段の3人の存在感もまた素晴らしい。