彼の私生活にもテレビカメラが入り、体の不調のために傷みの発作に耐えている場面などが紹介され、「芝居じみているな」とも少し思ったが、耳が聞こえない生活は気の毒なことだと、騙された。
サングラスに髭と長髪のルックスは、いかにも芸術家という風情で巧くはまっていた。後天的に耳が聞こえなくなったということは、他人にはよく判らないことだから、世を騙し騒がせた本人は、それ相当の批判や弾劾を受けるべきだと思うが、情けなくてかっこ悪いことだけど番組制作側が騙されることもあるだろう。
今回の不祥事で思い出すのが、2002年4月28日放送のNHKスペシャル「奇跡の詩人~11歳 脳障害児のメッセージ~」。あの番組ほど今回はひどくなかった。
概して、NHKのドキュメンタリー制作者は、真摯な態度で取材を続けてよい番組を提供していると思っている。多くのスタッフを抱えて膨大な情報を扱っていれば、10年に1回くらいは、結果的に「やらせ」になってしまった番組も出てくるだろうと私は大目に見る。
それよりも、不偏性を看板に登場した籾井会長の「偏り」と見識のなさと非常識は疑いようがなく、彼こそ早く辞めることがNHKの浄化につながると思う。彼は経営委員に、前もって日付が白紙の辞表を提出していないのだろうか…。
細胞が夢だっただけではなく、一部のずさんな研究者のせいで日本の研究レベルがお粗末だと思われること、それも残念である。
こういう研究はもっと集約的に国家レベルで研究を追推し進めてほしいと思うばかりだ。たとえば、とんでもない巨費を投入しデータ隠ぺいなどの不祥事や事故を繰り返し、まだ一度の発電もしていない高速増殖炉「もんじゅ」にまだ夢をつないでいるなら、それは直ちにやめてほしい。
ノーベル賞受賞の山中教授が、かつて自ら駆けずり回って研究費を工面していた日々を思うと、人の命を救う方に費用をかけてほしいものだ。