ショパンは、書きなぐった楽譜をフォンタナというパートナーに清書を頼んでいた。また、楽譜の出版社への売り込みもフォンタナが任されていた。
ショパンは「幻想即興曲」が、他人の作品と酷似している駄作だから破棄したいと思っていたという。なので生前この楽曲が楽譜として出版されることや演奏されることはなく、ショパンの死後フォンタナが楽譜にして出版した。
番組では毎回、加羽沢美濃が名曲の特徴や素晴らしいところを自らピアノを弾きながら解説してくれる。これが分かりやすくて楽しくて、こういうことを音楽教室で教えてくれれば、どんなにかクラシック音楽を楽しく聴けるだろうかと思う。「らららクラシック」、なくならないでほしいと思う、数少ない番組である。
ショパンの話にもどそう。
フォンタナが整理したショパンの楽曲がすべて優れた曲ではないかもしれないが、五線譜を清書して出版社に持ち込んで楽譜というレガシー(遺産)を残した彼の行為は、ある意味ショパンより偉大であったかもしれない。
フォンタナの職業は代書屋ではなく、作曲家だったことを鑑みると彼の仕事は実に偉大であった。(フォンタナの曲も遺っているそうである。)
優れた曲を遺すのは、作曲者でも、それを整理した人間でも、楽譜出版社でも、演奏家でもなく、優れた曲を楽しむ聴衆なのである。いま、ショパンの曲で最も人気のある曲のひとつが「幻想即興曲」だということがそれを証明しているのではなかろうか。