今日は、ワシントン・ナショナル・ギャラリー展のメイン作品をご紹介。
日本初の鉄道開業は、ご存知のとおり明治5年の新橋~横浜間で、
マネのこの作品が描かれた前年のことである。
この母と娘の後方に広がるのは、パリの最も古い駅サン=ラザール駅。
開業は1837年というから、わが国より随分前のことになるが、
パリでは、鉄道のある風景はもうすでに日常であったのであろう。
だからなのか、この「鉄道」というタイトルの作品には、
汽車の蒸気が見えるばかりで、主役は母と子と思しきふたりなのである。
母親の右腕にあごを乗せてまどろむのは子犬だろうか、
ひざの上には手に持った本まで描かれている。
本から目を上げた母親は、まるでカメラ目線のように作家の方を向いており、
その印象だけがなぜか非日常で、鉄柵の向こうに広がる日常とは対照的である。
いずれにしろ、のどかな空気が流れる、
線路も見えず汽車もいない鉄道風景である。
(以前紹介した、マネが描く私の琴線に触れる二人の女性。)
今回のワシントン・ナショナル・ギャラリー展には、