遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

鉄道/エドゥアール・マネ

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エドゥアール・マネ 「鉄道」 1873年 


今日は、ワシントン・ナショナル・ギャラリー展のメイン作品をご紹介。


日本初の鉄道開業は、ご存知のとおり明治5年の新橋~横浜間で、

マネのこの作品が描かれた前年のことである。

この母と娘の後方に広がるのは、パリの最も古い駅サン=ラザール駅。

開業は1837年というから、わが国より随分前のことになるが、

パリでは、鉄道のある風景はもうすでに日常であったのであろう。


だからなのか、この「鉄道」というタイトルの作品には、

汽車の蒸気が見えるばかりで、主役は母と子と思しきふたりなのである。

母親の右腕にあごを乗せてまどろむのは子犬だろうか、

ひざの上には手に持った本まで描かれている。

本から目を上げた母親は、まるでカメラ目線のように作家の方を向いており、

その印象だけがなぜか非日常で、鉄柵の向こうに広がる日常とは対照的である。


いずれにしろ、のどかな空気が流れる、

線路も見えず汽車もいない鉄道風景である。



(以前紹介した、マネが描く私の琴線に触れる二人の女性。)

「フォリー・ベルジェールのバー」
http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/7656452.html


今回のワシントン・ナショナル・ギャラリー展には、

このベルト・モリゾ(彼女も画家)の作品も数点来日している。