ヘリコプターに搭乗した少年が、テムズ川が下を流れる景色を見ている。
ヘリを降りた少年が、今観てきたロンドンの街を絵にする。
その絵は、上空からのロンドンの写真と寸分たがわず再現されている。
もう随分前になるが、私はテレビでそのドキュメンタリーを観ていて、驚愕した。
ある建物や風景を目で見てそれを一瞬で脳に焼付けて、
実際とまったく同じように絵に描ける才能を持つ人間が存在することに、とても驚いた。
彼らのスーパー能力は、専門的にサヴァン症候群という症例で分類される。
サヴァン症候群(savant syndrome)とは、知的障害や自閉性障害のある者のうち、ごく特定の分野に限って、常人には及びもつかない能力を発揮する者の症状を指す。 能力の例 ・特定の日の曜日を言える(カレンダー計算)。ただし通常の計算は、1桁の掛け算でも出来ない場合がある。 ・航空写真を少し見ただけで、細部にわたるまで描き起すことができる(映像記憶)。 ・楽譜は全く読めないが、1度聞いただけの曲を、最後まで間違えずにピアノで弾くことができる。 ・書籍や電話帳、円周率、周期律表などを暗唱できる。内容の理解を伴わないまま暗唱できる例もある。 ・芸術性の非常に高い作品(絵画、彫刻など)を作ることができる。 ・並外れた暗算をすることができる。
父が亡くなり、その兄に遺された遺産の分け前を目当てに、弟のトム・クルーズが、
兄を誘拐同然の形で、自分に遺された父親のオープンカーで、アメリカ大陸を西へ走る。
弟は、この遺産相続騒動ではじめて兄の存在を知る。
飛行機に乗ることを拒否する兄と、仕方なく車で大陸横断するうちに、
弟は兄のスーパー能力に気がつき、それを理由に一儲けをたくらみ実践。
金銭以外に興味を持たない弟は、兄と旅を続けるうちに、
小さい頃から大好きな、想像上の遊び相手「レインマン」を見つけるのである。
実在した優しいお兄さん、「レイモンド」であった。
「レインマン」は「レイモンド」だったのである。
兄レイモンドを演じたダスティン・ホフマンの役作りはすごいの一言、
実在のモデルはいたようだが、ダスティンのレイモンドへの乗り移り方が驚愕なのである。
ロード・ムービーのご多分に漏れず、手の込んだストーリーはなく、
その分ダスティンとトム・クルーズの演技が立ち上がってくるのである。
彼らが演じた、心の温まる目頭が熱くなる優しい男たちが、思い起こされる。
本作は1989年のアカデミー作品賞、
監督賞(バリー・レヴィンソン)、
主演男優賞(ダスティン・ホフマン)を受賞した。