遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

マラソンマン/ジョン・シュレシンジャー

イメージ 1

ラソンマン

監督 ジョン・シュレシンジャー
脚本 ウィリアム・ゴールドマン
出演者
ダスティン・ホフマン
ローレンス・オリヴィエ
ロイ・シャイダー

公開 1976年10月6日(米国) 1977年3月26日(日本)
上映時間 125分


レインマン」「わらの犬」に続いて、

ダスティン・ホフマンシリーズのご紹介、第3弾は「マラソンマン」。

公開当時のロードショー以来の鑑賞なので、99%新鮮な作品であった。


共演陣は、泣く子も黙る名優ローレンス・オリビエ卿と、

フレンチ・コネクション」「ジョーズ」のキャリアで、

当時すでに貫禄十分だったロイ・シャイダー


ダスティンは、コロンビア大学の大学院生の役。


ローレンス・オリビエは、元ナチの戦犯で、南米に潜伏している身の上で、

世を偲ぶ仮の姿は、歯科医。

戦争時代に、収容所のユダヤ人を相手に「取引」をして、「私財」をため込んだ。

その「私財」を管理してくれていた実兄がニューヨークで交通事故死し、

オリビエは「私財」を何とかしなければと、潜伏地からニューヨークへやって来た。


その「私財」をめぐって、ダスティンの兄ロイ・シャイダーが、

暴漢に教われる事件に遭遇し、弟ダスティンにまでその影響が及んでくる。


ダスティン以外の登場人物はなんだか普通ではなく、

ストーリーもはっきりくっきり立ち上がって来なくて、

だからこそ、ドキドキワクワクするサスペンスならではの展開を見せる。

ジョン・シュレシンジャー(「真夜中のカーボーイ」)の見せ方にキャリアとセンスを感じる、

厚みも奥深さもたっぷりあり、それはサム・ペキンパーの比ではない。


この作品の役で、オスカーの助演候補になったローレンス・オリビエ。

彼自身も、彼を取り巻く共演者もスタッフも刺激があったようで、

それは作品の厚みや奥深さとは無関係ではなかったようだ。

歯科医オリビエの、ダスティンへの拷問ツールは、

音を聞いただけで歯が痛くなってくる歯科治療機材。

その設定も見事だが、その扱い方も秀逸で、オロビエ自身がその場面の演じ方を深く考えたらしい。


そのオリビエ一味から逃げ出すダスティン、

日課のランニングよろしく、夜の高速道路を自分の足を使って走って走って走って逃げ続ける。

タイトルの「マラソンマン」は、このシーンで象徴付けられる。


ナチの残党とその私財をめぐるサスペンス・ドラマは、

ニューヨークとパリを舞台に、名優たちを集めて、名作に仕立て上げられた。


借りてきたDVDには、監督・脚本家・製作者をはじめ、

ダスティンやロイなどの出演者のインタビューなどのおまけもついている。

製作から相当年月を隔てたインタビューにもかかわらず、

この作品への各人の思い入れが伝わってきて、

ここでもこの作品の厚みと奥深さが証明されるのである。