遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

セロニアス・ヒムセルフ/セロニアス・モンク

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セロニアス・ヒムセルフ/セロニアス・モンク



ジャズピアノのソロアルバムである。

プレイヤーは、セロニアス・モンク


バグス・グルーヴでマイルスと歴史的なセッションを繰り広げたピアニスト、、

「ラウンド・ミッドナイト」を世に出した作曲家、セロニアス・モンクである。


ラウンド・アバウト・ミッドナイト/マイルス・デイビス
http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/30932273.html


リストの超絶技巧練習曲の、対極に位置するのはどんなピアノ演奏だろうか。

ドビュッシーピアノ曲でもいいかもしれないが、

ご近所から聞こえてくる、お嬢さんのピアノ演奏がその最右翼だと思う。

その次くらいに位置するのが「セロニアス・ヒムセルフ」だと思う。


異次元のピアノである。

こういった作品の広がりのある空間を、

文字でどう表現しようかと思ってしまう。


ゆっくりとしたテンポだと、時間的な音のつながりが容易に想像できるのだが、

モンクのピアノは、微妙にその時間的つながりが途切れそうになる。

その絶妙の間隔が、他の追随を許さないほど気持ちのいい感覚になってくる。


それから、音の組み合わせといおうか、音の選び方といった方がいいのか、

音のつながりをこういう風にやってしまうのかと驚くのである。

初めて聞いた人は、それってミスタッチじゃないの、と訝(いぶか)りたくなるような、

音のつながりなのである。


20歳のころ、9時30分に閉店となるバイト先のレコード屋を後にして、

ジャズ喫茶によく立ち寄って、終電車までの時間を一人で過ごしていた。

大型スピーカーから流れてくる、このモンクのピアノは、

暗くも哀しくもなく、はっきりとした筋道や輪郭はないのだけれど、

なんだか嬉しくなって希望が湧いてくる。

おそらく、演奏する側の思い入れと私の感覚にはずれがあったと思う、

しかし、あれから35年経っても、あの頃と同じ感覚で響いてくれる。


楽しい会話のバックに流れていてくれたら、

とても演出効果のあるようなジャズとは、

まったく異質の高みにある音楽である。

このアルバムの不思議な魅力は、永遠に人を惹きつけてやまないのである。
 

1957年4月12日、16日、NYにて録音。

曲目リスト
1. パリの四月
2. ゴースト・オブ・ア・チャンス
3. ファンクショナル
4. センチになって
5. アイ・シュッド・ケア
6. ラウンド・ミッドナイト(イン・プログレス)
7. ラウンド・ミッドナイト
8. オール・アローン
9. モンクス・ムード
(9.モンクス・ムードのみジョン・コルトレーン(ts)とウィルバー・ウェア(b)が参加)