遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

マイルス・イン・ザ・スカイ/マイルス・デイビス

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  68年録音作。このアルバム、マイルスが初めてエレクトリック・サウンドに取り組んだ作品として、発表当時大いに話題になった。メンバー的にはウェイン・ショーターハービー・ハンコックロン・カータートニー・ウィリアムスを擁する黄金のクインテットによる演奏(<2>だけはジョージ・ベンソンを加えたセクステット)。しかしハービーはエレクトリック・ピアノを弾き、トニーは8ビートを叩き出すといった具合に、ロックやR&Bの要素を多分に含んだマイルス流のニュー・サウンドを聴かせる。曲はマイルスのオリジナル2曲、そしてウェインとトニーのオリジナルが各1曲。オリジナル盤は以上の4曲入りだったが、現在出ているCDは別テイク2曲が追加され全6曲入り。マイルスのエレクトリック指向はその後、『キリマンジャロの娘』『イン・ア・サイレント・ウェイ』を経て『ビッチェズ・ブリュー』へと引き継がれるわけだが、これはその原点となった作品であり、同時に過渡期の姿を記録した作品でもある。(市川正二)


若きビートルズは、1966年当時すでに、「サージャント・ペパー~」で、

ロックの輝かしい金字塔を打ち立てていた。

その2年後、まだまだ、マイルスの黄金のクインテットは継続しているが、

ジミヘンとの邂逅で、エレキ・ギターにしびれてしまっていたマイルスは、

「オレたちもそろそろ電気仕掛けでいくか」と、

ハービーにエレクトリック・ピアノを用意してやった。


そのハービーが、はじめての電子ピアノを弾いても素晴らしくって、

後の「処女航海」や「カメレオンマン」より、

断然このアルバムの彼のほうが溌剌としている。

静謐なメロディーとサウンドが、泉のように湧き出てきて嬉しくなる。


負けじと、マイルスもウェイン・ショーターもホーンで対抗する。

マイルスって立派なプレイヤーだったんだと、再認識するプレイを随所で聞かせてくれる。

ショーターは、トニーのスティックで歌う「幸せのシンバル(私が命名)」に乗って、

これぞテナー・サックスというインタープレイを展開してくれる。


このような音楽は、たとえば、何らかの映像のバックに流れていて、

そのまま消えていって、音楽として単体で楽しむことはあまりないのかもしれない。

かといって、じっと鑑賞する類の渋い音楽でもないのだが、

マイルスの、この電気仕掛け第1号アルバムは、何度聴いても空を飛ぶような気分になる。




1970年代の「エレクトリカル・ジャズ・パレード(私が命名)」の萌芽を、

このアルバム「マイルス・イン・ザ・スカイ」に見てとれるのである。