遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

いのちの食べかた/ニコラウス・ゲイハルター

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いのちの食べかた OUR DAILY BREAD
ジャンル : ドキュメンタリー
製作年 : 2005年
製作国 : ドイツ=オーストリア
配給 : エスパース・サロウ
上映時間 : 92分

監督 : ニコラウス・ゲイハルタ


昨日、昼休みにお茶を飲みながら若い部下と、「塩」の話をしていたばかりだった。

その若い部下は、塩分を控えめにすることを心得ていて、

昨日も、昼食時に定食屋さんで出してくれたよく出汁の利いた味噌汁を、

残してきたばかりだった。

ちょっと神経質すぎるので、塩分やミネラルが生物にとって如何に大切かという話、

ミネラル分の多い土壌にはそれを摂取するために、多くの動物が集まってくる、

というアマゾン川の話を聞かせてやった。

それから話は、オーストリアザルツブルク(ザルツ=塩、ブルク=砦)に話が飛び、

あの辺は岩塩がたくさん取れるのだろうなとか、

とにかく、食事はいろんなものを好き嫌いなく美味しくいただいていれば、

バランスが崩れることはないから安心しなさい、などということに話は落ち着いた。


ドキュメンタリー映画いのちの食べかた(OUR DAILY BREAD)」には、

その、岩塩の採掘現場の映像も出てくる。

そのほか、とにかく私たちの胃袋に入るものの映像のオンパレードである。


鶏、ひよこを選別してブロイーラーを育てて、体育館ほどの広さの養鶏場で大きく育つ。

牛、人工授精で美味しい親の精子から、美味しい子どもを産ませて(帝王切開!)育て上げ、

電気ショックで殺されて、流れ作業で解体されていく。

豚、美味しく育つように、女性二人に虚勢手術を施された仔豚たち、

大きく育ってロボットで解体され、内蔵は腸詰になるのでひとつひとつ女性の手で区分けされる。

そして、それぞれ、鶏肉になって、牛肉になって、豚肉になって、コンベアーで流れていく。

解体されるのだから当然に血がたくさん流れ出すが、

牛や豚を食べたことで、私たちの新しい血になるのだから、ありがたいことである、

感謝と合掌。


野菜や果物の収穫。

パプリカ、きゅうり、トマト、リンゴ、オリーブ、ホワイトアスパラ、

レタス、小麦、ジャガイモ、ひまわりなど、

天地ががはぐくんだ、宝石のようにきらきらした食物の収穫、

これまた、太陽と水と大地に感謝、感謝。


ナレーションも音楽も一切なし、字幕もなし、

現場の音が少し聞こえてくるだけの、淡々と映像を流すだけのドキュメンタリー。

私たちの食べ物と、それを育てて私たちに届けてくれる人たちの映像である。


日本の自給率は、1965年には70%を超えていたが、今は40%である。

コンビニの分刻みの賞味期限問題を、例に挙げるまでもなく、

わが国の食料食べ残し問題は、目を覆いたくなるし、

農業問題は政治舞台に登場してるのだけど、実に影が薄い。

このドキュメンタリーを農水省の役人に見てもらいたい、

否、若者に観てもらいたい、にしておく。


(過去のわが拙文)

人間は何を食べてきたか
http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/7586917.html

森は海の恋人~牡蠣が食べたい
http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/22280610.html

もの食う人びと/辺見 庸
http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/10664532.html