遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

暗殺者/グレッグ・ルッカ

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暗殺者(キラー)  グレッグ ルッカ (著), 古沢 嘉通 (訳) 講談社文庫




アラバマ物語の人道的弁護士の名は、アティカス・フィンチ。

彼にちなんで、その名を親から付けられたパーソナル・セキュリティ・エージェント、

アティカス・コディアック。

グレッグ・ルッカは、このアティカス・コディアックを主人公とした,

ボディ・ガードシリーズを著しており、

「暗殺者(キラー)」は、第3作目にあたる。


タバコ会社を相手に、巨大訴訟が起こるのだが、

そのタバコ会社の元職員が、巨悪をあばこうと原告側の承認に立つ。

その、証人を抹殺しようとタバコ会社は暗殺者を差し向ける。

その暗殺者から証人を護る役目が、アティカスの今回のミッションなのである。


当然にボディー・ガード側は、利発で訓練を積み重ねた、

屈強な連中がそろっているのであるが、

暗殺者は、さらに狡猾でしたたかなすごい奴なのである。


暗殺者は、なかなか姿を現さないのであるが、確実に工作や仕掛けを積み重ね、

それを裏付けるあの手この手の不死身な波状攻撃は、

よく構成され、創作されている。


一方、ボディ・ガード側は、徹底的な守戦態勢で、

攻撃側と比べると一見「地味」チームなのかもしれないが、

緻密な大人たちの仕事振りを見せてくれる。

特に最後のクライマックスは、命まで取られない私たち読み手が、

とても緊張してしまう、スリリングな思いをするのである。


まだ未読であるが、次の「逸脱者(上・下)」に、

「暗殺者」の余韻が続いていく予感がする結末であった。