ピアニスト、ウラジミール・ホロヴィッツは、1903年生まれ、
初来日が1983年であったから、その時すでに80歳。
日本に何をしに来たかといえば、観光などではなく演奏会に来たのであった。
私はその時、始めてこの演奏家を知る、
来日コンサートのチケットの高さの割に、あまり良い演奏会ではなかったようであったが、
しかし、ホロヴィッツは86歳で死去するまでピアニストであり続けた。
このCDは、彼の40歳代の頃の録音であり、
「超絶技巧名演集」と名付けられているように、
天才の名を欲しいままにした若き日の彼の名演奏集である。
たとえば、プロコフィエフが素晴らしい作品を遺しても、
それを必要十分に演奏する芸術家が存在して初めて、
芸術作品と認められるわけである。
たとえば絵画や彫刻なら、ひとりの芸術家の完成作品で、すべてが完結するのであるが、
音楽は、優れた演奏家が偉大な作曲家の世界と混ざり合ったり衝突したりして、
作品が完成する。
其処が音楽のもっとも特徴的なところなのだろう。
この2枚組2,202円のCDは、お安くて凄くて、幸せになれる。
モノラル録音だけど、音楽を楽しむのだから関係ない、
録音状態より演奏内容が優先される、(私は、音も演奏内容もよく分からないのだが)
それより優先されるのは、とにかく何でも良いから聴くことである。
バラエティに富んだ数々の曲と、ホロヴィッツの超技巧と、
ゆったりとした時間をたっぷり楽しまれたい。
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