遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

パガニーニ・フォー・トゥー ヴァイオリンとギターのための作品集

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パガニーニ・フォー・トゥー ヴァイオリンとギターのための作品集
ギル・シャハム、イェラン・セルシェル


素養が身に付いていないので、クラシック音楽を聴く時は、グラモフォンの創立111年記念BOXから、ランダムに1枚引き抜いてそれをしばらく試聴する。

今回は黄色いBOXから引き抜いたのが、「パガニーニ・フォー・トゥー ヴァイオリンとギターのための作品集」。

ニコロ・パガニーニ(1782-1840)の作品を自宅できちんと聞くのは初めて。演奏者もまったく未知の二人。
パガニーニのイメージは、指がこんがらがりそうな「カプリースhttp://www.youtube.com/watch?v=_OKPUausH64
のようなヴァイオリンの超絶技巧曲の作り手。

で、「ヴァイオリンとギターのための作品集」も、そんなイメージの裏付けで聴き始めた。
そもそも、ヴァイオリンとギターの、ありそうでない組み合わせの意外性が、はじめて食べる料理に箸を付けるような心境だったのだが、これが何とバロック音楽のような清らかなさわやかさで少し驚いた。

なんでも、若きパガニーニがギターを弾く恋人のために作った作品集だとかで、デュエットして恋を楽しんだことが容易に想像できる作品群である。
超絶技巧で甘い恋は語れないということなのだろう、言うなればこれは「スウイート・パガニーニ」である。

ヴァイオリンがメインでギター伴奏のアンサンブルは、二つの楽器の演奏とは思えない重厚さがある。
もちろん恋人のために、ギターの主旋律をヴァイオリンが伴奏するというフレーズも多く用意されていて、楽しい。

ゆったり感のあるふくよかな曲は一日の疲れを癒してくれると思えば、朝からベッドの中で聴いても、さわやかな目覚めを約束してくれそうな清らかさもある。(と自分で書いて、なんだかヒーリング・オムニバスアルバムの宣伝文句のようで、品格がない…。)

ギル・シャハム(ヴァイオリン)イェラン・セルシェル(ギター)のセッションはとてもヴィヴィッドで、1992年のとても良い録音も合わさって、スウイート・パガニーニの世界を表出していて見事である。


ヴァイオリンの助奏が付いたギター独奏曲『ロマンツァ』や楽器の機能を十分に生かした軽快な『常動曲』など、ヴァイオリンの鬼神と讃えられたパガニーニがこの楽器とギターのために書いた作品を収めたアルバム。「チェントーネ」は他人の作品などからの寄せ集めの意で、メドレーのようなサロン風のソナタです。ヴァイオリニストの第一人者シャハムと、現代を代表するギタリストのひとりであるセルシェルの初共演盤にあたります。(ユニバーサルミュージック)

【収録情報】
パガニーニ:
・ソナタ・コンチェルタータ イ長調 M.S.2
・6つのソナタ 作品3 M.S.27から第1番イ長調、第4番イ短調、第6番ホ短調
・大ソナタ M.S.3から「ロマンツァ」
・チェントーネ・ディ・ソナタ M.S.112から第2番ニ長調、第4番イ長調カンタービレ ニ長調 M.S.109
・ソナタ・プレギエーラ(祈りのソナタ)へ短調 M.S.23(ハニバル編)
・常動曲ハ長調 作品11 M.S.72

 ギル・シャハム(ヴァイオリン)
 イェラン・セルシェル(ギター)

録音時期:1992年11月
録音場所:ベルリン、イエス・キリスト教会
録音方式:デジタル(セッション)