風雨がたたきつけるように襲ってくるなか、じっと嵐が通りすぎるのを待つ鳶(とび)。
暗闇をしんしんと舞い落ちる雪の中、身を寄せ合ってじっと朝を待つのは二羽の鴉(からす)。
晴れた大空を自由に飛び交う鳥たちを、このようにじっと耐える姿で描いた与謝蕪村(1716-1787)。
「鳶・鴉図」は、「謝寅(しゃいん)」の落款を有す蕪村晩年の作品である。重要文化財。
俳句を作りながら諸国を鳥のように自由に歩いて来た自分を、実はずっと風雪に耐えてきた人生だったのだよと、晩年の蕪村は言いたかったのかもしれない。
鳶の図は、風が見える。
鴉の図は、白く塗り残した舞う雪に、芸術の一瞬を見ることができる。
残された俳句と俳画と絵画から、この孤独な天才の創作活動を通じた生涯が見えてくる。