遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

【国宝展】夜色楼台図/与謝蕪村

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京都の国宝展で、与謝蕪村(1716-1784)の「夜色楼台図(やしょくろうだいず)」(18世紀)の実物を初めて鑑賞。

この展覧会の最終ステージでようやく登場した、私の中では真打登場といった感がある。感激。

もっと長くて大きい作品だと思っていたら、意外と小ぶりの縦28cm、横約130cmの作品が表装され掛け軸になっていた。

雪が降り積もる京都の夜の景色を、さらりと蕪村が描いた(ような感じがする)傑作である。

東山三十六峰に降り積む雪と、その峰々に抱かれた京都の町の静かなたたずまい。

蕪村は、家々の灯りを表すため、ほんのわずかな朱をところどころに入れて仕上げている。暗黒の空と風景画のなかに、蕪村はそのわずかな朱をもって、人々の暮らしを表現したのである。(以下、作品部分)

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紙本を通り抜けて、上下左右に延々と京の夜景が続いていくような、壮大な実に広がりのある表現方法は印象的で、作者蕪村の、スケールの大きさを再認識させられるものである。

また、母親が待つ家を持たなかった彼の、憧憬や哀愁もそこには見えてくるのである。

私はかつてこの絵(画像)を見て以来、遠くに見える大きなマンションや民家の夜の灯りが、とても温かいものに感じられるようになった。それまでに見ていた夕景が違う感覚で見えるようになった。

家の灯りは、ろうそく色(電球色)が落ち着くようになった。