遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

七冠は目の前に/井山祐太

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2月18日、囲碁界初の同時期の7大タイトル独占(グランドスラム)を目指している井山祐太が、2016年の棋聖戦7番勝負を4連勝してタイトル防衛を果たした。

昨年の棋聖戦は、今年と同じ対戦相手の山下敬吾に3連勝ののち3連敗し7局目でかろうじて勝利し棋聖戦を防衛した。その少し前の2014年12月には、王座と天元を相次いで失い、さしもの井山もスランプ状態に突入したのかと思った。

しかし、棋聖戦を薄氷の思いで防衛してからの井山は、阿修羅のごとく勝ちまくり、本因坊と名人を防衛し、失った王座と天元の挑戦者に名乗りを上げ、前年負けた相手からタイトルを奪い返した。

そして、井山が一番長くタイトルから遠ざかっていて、最も注目されていた十段戦は、挑戦者決定戦で土俵際で踏みとどまり、二十歳の新鋭を破って挑戦者になった。もし、3月8日からの十段戦5番勝負に勝利すると、2012年以来の十段返り咲きとなると同時に、囲碁界初の7冠保持者となる。

タイトル戦の挑戦者になるのも、タイトルを防衛するのも、どちらも至難の業なのだが、それを一度に独占しようとしているのだから素晴らしいことである。2年ほど前に、当時6冠だった井山よ7冠は目の前だみたいな記事を書いたとたん、4冠になってしまったことがあるのだが、今度は大丈夫だと思う。

井山が7冠になって、「国技」とも言うべき囲碁が広く再認識されて、「ヒカルの碁」以来の囲碁ブームが巻き起こればいいのになと、部外者ながら思う春の宵なのである。

【井山祐太7冠の軌跡】
名人(めいじん) 
2009年獲得、2010防衛、(2011失冠)、2013返り咲き、2014、2015連続防衛、現在3連覇中

本因坊(ほんいんぼう) 
2012年獲得、2013、2014、2015と連続防衛、現在4連覇中

棋聖(きせい) 
2013年獲得、2014、2015、2016と連続防衛、現在4連覇中

王座(おうざ) 
2012年獲得、2013防衛、(2014失冠)、2015返り咲き

天元(てんげん) 
2011年獲得、2012、2013と連続防衛、(2014失冠)、2015返り咲き

碁聖(ごせい) 
2012年獲得、2013、2014、2015と連続防衛、現在4連覇中

十段(じゅうだん) 
2011年獲得、2012防衛、(2013から失冠中)