弥勒菩薩半跏思惟像(みろくぼさつはんかし(ゆ)いぞう)
父親が病院へ運ばれなかったら、奈良へ行こうと思っていた。
いとうせいこうとみうらじゅんの仏像巡りのテレビ旅番組「新・見仏記 奈良斑鳩編」で、彼らが興福寺の国宝館でスーパースターの阿修羅像や天燈鬼に、ヒューと息を漏らしているのを見て、無性に興福寺に行きたくなったからだ。国宝館は逃げないし会期も定めがないのだから、またゆっくり会いに行こうと思う。
弥勒菩薩といえば京都は広隆寺のそれがつとに有名。その美しさはもちろんのこと、国宝の第一号で、京大生が抱きついてその優美な指を折ってしまった事件でもつとに有名。私は、小学校の担任に「その事件」のことを教えてもらって以来、広隆寺の弥勒菩薩のファンになった。小学生には、中宮寺の弥勒菩薩は広隆寺のそれに比べて、柔和さやなまめかしさが不足していて馴染めなかった。
それがいまは好みが逆転している。いつの頃からか、中宮寺の弥勒菩薩の方に魅力を感じるようになった。こちらの方が芸術的で、どっしりと重厚感があり微笑しているが媚びない感じが凛々しい。番組の中でエジプトのスフィンクス、レオナルド・ダ・ヴィンチ作のモナリザと並び「世界三大微笑像」だと紹介されていた。誰が決めたのかは知らないが異論はない。
中宮寺は法隆寺の近くにあるが行ったことはない。法隆寺は3回行ったが(1回は小学校の遠足)、中宮寺がその近くにあると知らなかった。京都の広隆寺にも行ったことはない。かつての憧れと、今の憧れに会いたいものである。