遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

4月から始まったテレビドラマ総括

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私はテレビ・ドラマをほとんど見ない人種だったのだが、「家政婦のミタ(再放送)」や「半沢直樹」に刺激された脳が、また同じものを欲しがるようになったのだろうか、4月からは4本のドラマをずっと見続けている。
ドラマ1クールは3か月なので、この4本のドラマはあと1~2回で終了。せっかく見続けているので、私なりに総括。残念ながら、my食事会メンバーは誰もこの4本を見ていなかったので、話題にならなかった。
どのドラマも、「あるある度」満点で、なのにスリリングで刺激度がある不思議さ。嫌われ役悪役俳優女優たちが偉い。


「花咲舞が黙っていない」80点
池井戸潤の銀行ドラマ。毎回、銀行の臨店指導部の杏と上川隆也の前に、銀行内部の不祥事が明らかになってくる。それらを二人が解決していくのだが、不祥事の当事者(主に銀行の支店長や幹部)たちに視聴者はストレスを覚える。どこにもいそうな自分のことしか考えていないご都合主義の救いようのないばか者なので、フィクションなのに腹が立ってしょうがない。視聴者はみな、自分のことを棚に上げて怒っているのだろう。
でも最後には、花咲舞(杏)がすっきりさせてくれる。3か月間なら、こんなリアルなドラマも耐えられる。


ルーズヴェルト・ゲーム」75点
これまた池井戸ドラマ。
今日の阪神タイガースはロッテ相手に「ルーズヴェルトゲーム」で勝利した。ルーズヴェルト大統領が「一番おもしろい野球のゲームスコアは、8対7だ」と言ったことから、逆転逆転のスリリングな大量得点のゲームを「ルーズヴェルトゲーム」と呼ぶ。
ドラマは、とあるメーカーと社長(唐沢寿明)をめぐる、会社乗っ取り劇の逆転逆転のスリリングな舞台裏を描いていて、毎週目が離せない展開となっていく。並行して、そのメーカーの弱小野球部が、廃部される危機を乗り越えていくというもう一つのドラマが、これまた手放しで面白い。野球部の救世主となる契約社員からエースに登りつめた若い男優。野球経験者だなと思っていたら、元西武の工藤公康の息子だった。サマになってるわけだ。
半沢直樹が85点なら75点くらいの完成度かな。でも、とても面白い。


極悪がんぼ」75点
反社会的勢力に限りなく近いコンサル業に騙されて借金を抱えた女を、私の好きな尾野真千子が演じる。尾野真千子は、「毒食らわば皿まで」と、自らも似非コンサル業者に身を置き、ダーティな仕事をクリアしていきつつ自分の借金返済のために経験を積んでいく物語。
架空の都市で、三浦友和竹内力椎名桔平板尾創路小林薫、オダギリ、宮藤官九郎ら癖のある登場人物が、法律違反を犯してあの手この手の「経済活動」を突き詰めていく。受験勉強が第一の高校生にはそれらの「経済活動」がピンと来ないかもしれない。だから、視聴率はいまいちなのかも知れない。
私は、「こんなの裏世界でもなんでもない」と楽しんだり気を付けようと思ったり。
ドラマの最後に毎回板尾が、「『極悪がんぼ』はドラマです。法律に触れることがたくさん出てきましたが、本当にやったら捕まります。もちろん、被害にも合わないようにお気を付けください。」と真面目にお知らせしてくれる。
主題歌もとてもいい。


アリスの棘」75点
自ら医師になって父が医師として勤めていた病院に潜入して、謎の死を遂げた父親の死の真相を突き止めようとする娘。
主演は上野樹里。共演は、妹の医療ミスによる不審死の謎を突き止めようとする記者役のオダギリジョー
とんでもない医者がたくさん出てきて、その医師たちに対して冷徹な若い女性医師を私の好きな上野樹里が演じている。冷徹な役と上野樹里のアンマッチはあるが、「とんでもない医者」たちは、作り物めいた漫画チックな人物像なのだが、このドラマならでは堪らない刺激臭を出してくれていて、却って何だかリアル。患者の病気と本気で向き合っている医師がどれだけいるのかと、あらためて考えさせられる。
医師なのにほとんど病んでいる人物を演じる上野樹里の復讐劇は、まるで「ドラゴンタトゥーの女」のリスベットのごとく。