遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

平常一品の牛刀/有次

イメージ 1

1月頃だったか、フーディーズTVで、女性の料理家が自身の料理道具をいろいろ紹介しているところに出くわした。機能美に惹かれる道具ばかりで、さぞかし使い勝手の良いものなのだろうと見ていた。私が番組を見始めたころには、残念ながら包丁の紹介は終わっていたのだが、彼女の包丁に刻まれた刻印を記憶しておいてさっそくネットで調べてみた。

包丁に刻印されていた文字は「有次」。

私はそれを「ゆうじ」だと思っていたのだが、調べてみると「有次:ありつぐ」という、京都では名だたる料理道具のお店の名前であった。創業は1560年!、いま本店は錦小路に在る。

有次の出先が阪急百貨店にあることもわかり、暖かい陽光に誘われて思い立って、使うあてのなかった百貨店の商品券を手に阪急に直行した。

以前から、いい包丁が欲しくて(包丁の腕さばきはゼロに近いのだが)、どんな包丁を買おうかと調べていた。
何かのお返しの商品を選ぶギフトブックから包丁セットを選んだこともあるが、実際に使う前に手にとってしっくり来なかったので、処分のためにヤフオクに出品したこともある。

で、有次の「平常一品」という、鋼の上からステンレスをコーティングした手入れの容易な包丁にしようと決定。その、牛刀とペティナイフの「鍔(つば)」付きのものをそれぞれ1本ずつ購入しようと決めて、阪急に出向いた。

ところが、お店にはペティナイフは1本もなく、京都から商品が入ってくる予定もないという。「平常一品」は牛刀(三徳包丁)が1本のみ、それも持ち手に鍔が付いていないものしかないのだという。京都の店に行っても今は品不足で、作っても作っても売れていくという。消費税増税のせいなのだろうか。この3連休で京都の在庫はなくなったのでは、と店員さんは言う。

仕方がないので、鍔が付いていない平常一品の牛刀で妥協して買ってきた。お値段は税込で1万数百円だった。
私はまだ腕試しはしていないが、当然によく切れそうである。ただ、メンテナンスは大変そうで、私は砥石による包丁研ぎの腕を磨くことが先に求められている。

それにしても在庫がないと言われると、平常一品の鍔つきペティナイフがとても欲しくなるものだ。次は、京都の有次に何度か通うことにする。