遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ジャッキー・ブラウン/クエンティン・タランティーノ

イメージ 1



ジャッキー・ブラウン」は、クエンティン・タランティーノの3本目の監督作品。
タランティーノのすべての監督作品がまだ8作品だから、
3本目の作品といっても、「パルプ・フィクション」に続く作品だから、もう手だれたものである。

パム・グリアという女優を私は知らなかったのだが、タランティーノは子どもの頃からファンだったようで、
ジャッキー・ブラウン」は、彼女を主演にするために作った映画だったようだ。
私も一目で彼女を好きになった、褐色のエヴァ・ガードナーのようである。


小さな航空機会社のスチュワーデスが、パム・グリア演じる主人公。
年収1万6千ドルではとてもいい生活ができない彼女は、
よろしくない稼業のサミュエル・L・ジャクソンの配下で、いけないものの運び屋をサイドビジネスにしている。

悪行がたたって彼女は遂に刑事マイケル・キートン(バット・マン!)に捕らえられ、司法取引としておとり捜査を持ちかけられる。
サミュエル・L・ジャクソンをはめる為に、彼の海外からの50万ドルあまりの資金を移動し、
その金をよろしくない稼業の動かぬ証拠とするために、パム・グリアは大金の運び屋を任される。

パム・グリアがマイケルキートンにつかまった時にお世話になったのが、釈放屋ロバート・フォスター。
彼は、この飄々とした大人の役で、アカデミー助演男優賞にノミネートされた。
ふたりは、おとり捜査で大金を運んだ際にそれをネコババして、後の生活を楽なものにしようと企む。

この大金のショッピングセンターでの受け渡し場面が、とても面白い。
まずは、メキシコから大金を運んできたスッチーユニフォームのパム・グリアがパンツスーツを購入する。
試着室で大金の受け渡しをする相手が、ブリジット・フォンダ(祖父はヘンリー、父はピーター、伯母はジェーン)。
そのブリジットの運転手兼付き添い男がロバート・デ・ニーロ
ブリジットには小額だけを渡して、大金は釈放屋ロバート・フォスターが、試着室に取りに行く。

この3組の行動を3組を主役にして3回繰り返して見せる、
パルプ・フィクション」でも取り入れた、時制を戻してカメラの角度を変えるという手法が面白い。

最後に笑うのは誰なのかまでは書かないが、タランティーノお得意の暴力シーンは押さえられて、
すでに40代後半にしてまだまだ妖艶なパム・グリアを真ん中に、4人のおじさま役者が大人の演技を見せてくれる。
とりわけ、56才のロバート・フォスターが何ともとぼけたいい味を出していて素晴らしい。
でも大人の恋が似合うペーソスも持ち合わせていて可愛らしい。
デ・ニーロも笑ってしまうほどブリジットに小ばかにされるお馬鹿な悪人を演じていて、アハハと微笑ましい。

下敷きになった原作はあるようだが、タランティーノボビー・ウーマックの「110番街交差点」をテーマ音楽にして、
その音楽のように軽快な味付けで、音楽もセリフも印象的な大人の映画を作ってくれた。
彼の新作が待ち遠しい。