遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

そらすこん/川上未映子

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そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります 川上 未映子 (講談社文庫)



川上未映子のデビュー随筆集である。

今般、文庫になって再デビューした。

長いタイトルを略すと「そらすこん」とあいなる。



3人兄弟を女手ひとつで育てている母親を助けるべく、

川上は高校生のときから、昼は書店、夜は高級歓楽街(北新地)で水商売人をしていた。


芥川賞を取った今は、妻で作家でミュージシャンであるが、

高校生のときからそんなマルチな人間だったわけである。


このエッセーは、

歌手を目指して大阪から上京し、ネットでブログのようなものを書き綴っていた

オフィシャルサイト「純粋悲性批判」 http://www.mieko.jp/

が本になったものである。


高校生が本屋と高級飲み屋でアルバイトをしていれば、

知にまみれるわけで、まさに彼女の頭(脳)は、

世界や宇宙がすっぽりと入るくらいの大きさに成長していった。


このエッセーに登場する人物を、ほぼ登場順にざっとご紹介すると、

以下のようなことになる。





フンデルト・ヴァッサー、坂本弘道早川義夫松尾スズキ楳図かずお




川上を大きくしてくれた人たちの、ラインナップなんだろうと思う。


シンガーソングライターとして、一旗上げようと東京で一人暮らしを始めた川上の、

2003年から2006年までの、自分のことしか考えてないと言ってもいい独り語りの世界。

しかし、上京してまもない20代半ばの女子の世界、

半世紀以上も生きているくせに、「頭」の小さい私には広いこと、広いこと。



もう彼女が有名になってからだが、

「私はゴッホにゆうたりたい」という文章で、感動して記事にしたことがあった。
http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/59475395.html


それもこの「そらすこん」に挿入されている。


何かきらっと光る文章があれば、メモっておいて紹介するのだが、

このエッセーはそんな必要がないので、あえて紹介しない。


私はシーケンスに隅から隅まで読んだが、どこをどうパット開いても、

何度読んでも、いつ読んでも、すべて鑑賞に堪えうる文章がならんでいる。

↑こんな私の感想のような使い古された言葉など一行もない、

溌剌とした言葉の組み合わせが20代の女子なのである(今は立派な30代)。


このサイトを見つけて、本にしようと最初に企画した人が、

芥川賞作家川上を見つけ出したと言っても過言ではない。



33歳になった川上の最新小説「ヘブン」は、

紀伊國屋書店全店員が選ぶ今年いちばん読んでほしい本、

紀伊國屋ベスト「2009年キノベス」第1位に輝いた。
http://www.kinokuniya.co.jp/01f/kinobes/2009/index.htm#best10

「ヘブン」が文庫本になるのは3年後くらいかな、それまで待てるかな。