遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

人間は何を食べてきたか

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前から欲しかったDVDを、第1巻は新品を、第2巻は中古品を購入した。

それが、この2枚。

■「人間は何を食べてきたか」 第1巻  
・ 「第1集 一滴の血も生かす ~肉~」
・「第2集 一粒の麦の華麗な変身 ~パン~」

■「人間は何を食べてきたか 第2巻」
・ 「第3集 遊牧の民の遺産 ~乳製品~」
・「第4集 アンデスの贈り物 ~ジャガイモ~」
・「第5集 大いなるアジアの恵み ~米~」


これは1985年、いまから24年前にNHKで放送された、

食を問う番組のDVDである。

当時、わが国はバブル経済の真最中で、飽食の時代であった。

番組の作り手はすでに、日本の食糧事情について警鐘を打ち鳴らしていて、

その対極にある世界各地の食糧事情を世に紹介したのであった。


「第1集 一滴の血も生かす ~肉~」

年間4頭の豚を、自家製のソーセージやハムやベーコンにする、

ドイツの農家。

そのソーセージ作りを、隅から隅まで見せてくれるのである。

大腸や小腸や膀胱に、ミンチにした肉を詰め込んで作る、腸詰ソーセージ。

肝臓や心臓など内臓系の細切れ肉に、塩や胡椒をたっぷり利かせ、

豚の血を混ぜて作る、サラミ・ソーセージ。

朝まで生きていた豚が、夜には大量のソーセージやハムやベーコンやラードに変身していて、

ドイツのそのいつから営まれているのか分らない伝統に、引き込まれてしまった。



「第4集 アンデスの贈り物 ~ジャガイモ~」

アンデスにその起源を持つジャガイモは、

スペインによってヨーロッパに持ち込まれた。

聖書に記載のない食物は「悪魔の食べ物」と忌み嫌われ、

ヨーロッパで、ジャガイモは忘れ去られようとしていた。

しかし、アイルランドの大飢饉で、彼の地の人々の命を救ったのが、

寒さにも痩せた土地にも強い、ジャガイモだった。

その後、この育てても食べても実に魅力的なこの食べ物は、

瞬く間に世界に広がり、今ではもっとも多くの国で栽培され愛される食物になった。

いまでもアンデスインディオは、勾配のある痩せた土地に、

細々とジャガイモを植えて暮らしている。

今年は、わが国のジャガイモは不作だったようで、

大きくならなかった本来は規格外とされるジャガイモまで、

出回っているようである。

それでも、いま、アンデスの人たちが食べているものに比べれば、

何の問題もない立派なジャガイモである。



その他、パン(小麦)、乳製品、米と、

世界各地の人たちの生活にいかに密接に結びついているかが、

全5集にわたって紹介されている。

内容は、ほとんど憶えていなかったが、

24年前もいまも、同じように感動したはずである。


執拗に書いてしまうのだが、この国の病んだ部分のひとつが食糧問題、

それと関連した農業問題だと思う。

近くに計画中の公立図書館が完成した暁には(いつになることやら)、

もらってくれるなら、このDVDを寄贈するつもりである。