遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ロード・トゥ・パーディション/サム・メンデス

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彼らの職業は、暗黒街に身を置くマフィアである。


あるアイルランド系マフィアのボスが、ポール・ニューマンで、

いわば、ゴッド・ファーザーである。

その意味では、職業上もファーザー(父親)として大切な地位にあり、

トム・ハンクスは彼を父同然に慕う、一番の腕利きの部下であった。


ニューマンには、出来の悪い実の息子がおり、

部下でもあるのだが、仕事振りはハンクスの足元にも及ばない。


そして、ハンクスにも2人のまだ幼い息子が2人おり、

息子達はまだ父親の職業をよく分っていない。


ある日、長男はマシンガンを車に積んで出かける父親の車のトランクに忍び込んで、

父親ハンクスとニューマンのバカ息子の仕事振りを、

見てはいけない彼らの仕事振りを、目撃してしまったのである。


そこから、2組の父子の不幸なストーリーが始まる。

ハンクス父子とニューマン父子のチェイスがはじまる。



アメリカン・ビューティ」のサム・メンデスは、

本来なら、とても血なまぐさいストーリーを、ビューティフルに仕上げてくれた。


ハリウッドの「歩く良心」を代表する2人がギャング役なのだから、

柔らかなギャング映画に仕立てあがる。


しかし、物語の根幹は、あくまでも2人の父親の姿を描いたもの。

特にハンクスは、父親同然のニューマンとその実子のプレッシャーに、

圧しつぶされることなく、自分のファミリーの家長として、

自分の息子の父親として、クールに父としての使命を果たすのである。


見てはいけない父親の仕事場を見た長男は、

しかし、その後の父親の仕事振りに、

自分への愛情を感じないわけにはいかない。

嗚呼、親子のきずなより強いものがこの世にあるのだろうか。


アメリカの豊かな大地を、ハンクス父子は追いつ追われつ彷徨っていく、


父子の日本列島お遍路場面にはとうてい敵わないが、それを想起させる。



ラスト・シーンは、この映画の良心を凝縮したものであった。