遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

選ばれる男たち/信田さよ子

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選ばれる男たち 女たちの夢のゆくえ  信田さよ子  講談社現代新書



ときおり朝の駅前で見る光景。

信号のない横断歩道の前で白い車が停車し、

40歳代と思しき小柄の女性が車の助手席から降り立ち、

車の前を通って目の前の横断歩道を小走りにわたる。


ここまでは、別に普通の光景なのだがこのあとが少し違う。


横断し終わった女性は回れ右をして、車の運転席を眺め、

右手を顔の横まで上げてにっこりとして手を振る、

運転しているその女性と同じ年恰好の男性に、手を振られるのである。


これが夫婦だったら、すごいなぁと思う。

駅まで送り届けてくれた礼を言うにしても、

普通は車内で「ありがとう、行ってきます」ということになろうに。

中年夫婦なんだろうか、2人とも偉いなぁと思うのである。




信田さよ子の「選ばれる男たち 女たちの夢のゆくえ」は、

とにかく、60歳前後の女性たちの夫について、

つまり私と同世代の男たちについて、その実態を白日の下にさらしてくれるのである。


内容紹介

妻を見下す夫。正義を振りかざす夫。妻の話は無視する夫。挙げ句、妻に守
ってもらおうとする夫たちに、女たちは反乱の声をあげる。人気カウンセラ
ーによる衝撃の「男の実態、女の本音」。

妻を守る男はほとんどいない、というのが私のカウンセラーとしての実感
だ。でも、守らないだけならまだいい、あきらめればいいだけの話だから。
もっとたちの悪いことに、彼らは妻から守ってもらおうとするのだ。それも
威張りながらである。――<本文より>


目次

プロローグ おばさんも仲間に入れてほしい!
第1章 妻たちの反乱――夢の男を求めて
第2章 今度生まれてくるときは
第3章 正義の夫、洗脳する夫
第4章 選ばれる男の条件
エピローグ 草食系男子はホンモノか?



しかし、アラウンド還暦の男女諸氏は、

ダメ亭主の実態をよくご存知なので、いまさらこの本を読まなくてもいいかもしれない。


私は、比較的良い夫であり父親だと自負しているが、

信田の痛快なる指摘に、ぴったり当てはまることがたくさんあり、

イケナイ、この本は妻に読ませられない、と今思っている。


身につまされるだけだから、中年以降男性諸君は読まないほうが良い、

今から読んでも手遅れなのである、手の施しようがない。


男として少し反論すれば、

適齢期に結婚したくてしたくてしょうがなかったのは女性ではなかったか?

大多数の男は、結婚など望んでいないのではなかろうか。


女性は結婚したのち、自分のパートナーに遅かれ早かれがっかりするようだが、

そもそも、特に結婚したいと思っていない男と、

同じ屋根の下に住むから、夢は幻となってしまうのである。


一般的な男は、結婚相手に何を望むかと言えば、家事と性的関係。

それが後者の方は、すぐ疎遠になり、わが国は世界一のセックスレス大国のようである。

そのくせ虚勢を張り、「誰のために食えているのか」的態度で、

果てはちゃぶ台はひっくり返すわ、DV夫に成り下がる。

先だって「東京裁判」を見たが、あの被告席にいたA級戦犯のDNAは、

居丈高で無責任で傲慢なDNAは、いまだに日本の男子に内在しているようである。

一緒に暮らす弊害が、いろいろ出てきてしまうのである、

日本人は人間関係を保つのが、特に下手なのかもしれない、

通い婚で良いのになぁ。


信田は書く、「夢の男」とは「女らしい男」であると。

やさしくてよく気がつき美しい容貌でいながら、おもしろいことをしゃべって笑わせてくれる。

いざとなれば自分のために尽くしてくれ、いっしょにいればほっとできて、

それでいて楽しい。


これって「夢の女」と言い換えてもいいのではないだろうか、

かつて男が女に求めていたものと、非常によく似ていると思う。

だから、一緒に住まなければ夢が幻とはならないのではないだろうか。


人生に折り合いがついている方、

「だいたい人生ってこんなもんよ」と折り合いがついてる方は、

この本は読まなくてもいい。


私たちはなんとかやり直せる、という希望を捨てていない方は、

ショックを覚悟で読まれてもいいかも(笑)。


結婚活動をこれから控えている男女には、ぜひ読んでいただきたい。

女性は女らしい男を求める努力を惜しまず、

男性は女らしい男になるために惜しみない努力を払っていただきたい。

それが成功すれば、メンデルスゾーンの「結婚行進曲」が、

ほら遠くにかすかに聞こえてきましたよ・・・。